研究課題/領域番号 |
22H03870
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
紀井 俊輝 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (30314280)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 放射光 / バルク超伝導体 |
研究実績の概要 |
アンジュレータを用いて放射光を発生させるには、高輝度電子ビームを周期磁場中に入射しビームを周期的に蛇行させる必要がある。永久磁石を用いた従来型アンジュレータでは、入射部分の最初の1周期目の第一ピークの磁場強度を2番目以降のピーク磁場強度の半分に調節することが必要である。また、正確に入射を行うためには蛇行運動を与える磁場以外の成分の磁場は極力小さな値であることが重要である。 本研究で対象とするバルク超伝導体を用いたアンジュレータでは、磁場調整を行うためには超伝導体内部に流れる電流量やその分布を精密に制御することで入射部の磁場調整を実現する必要がある。本アンジュレータでは電磁誘導の原理を用いて超伝導体に電流を流すため、周辺の磁性体や、隣接するバルク超伝導体の作る磁場が相互に複雑に影響を及ぼしあうため超伝導体の加工による形状制御や位置制御の効果を直接的に予測し、最適化することができない。そのため、より精度の高い数値計算モデルや実測によって調整を行うことが不可欠で、磁場生成・制御試験と数値計算を繰り返すことで、ビーム入射部の高度な磁場制御を目指す。 今年度は、強磁性体とバルク超伝導体を組み合わせたアレイと既設の小径の試料ホルダを用いて磁場生成・制御試験を実施した。中央部分隣接7ピークにおけるピーク磁場強度のばらつきは2.7%となり、強磁性体なしで構築したアレイの場合(4.8%)に比べて、磁場ピーク値のばらつきを半分程度までと大幅に抑制できることを実験的に確認した。さらに、端部磁場補正については、ループ電流モデルにより予測計算を行った。その結果、バルク超伝導体の配列を工夫することで、大幅な改善が期待できることが明らかになった。 試料冷却クライオスタットについては、年度末にほぼ予定通りに納入され、ヘリウムを用いた冷却試験を実施し、冷却が行われていることまでを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁性体とバルク超伝導体を組み合わせたアレイと既設の小径の試料ホルダを用いて磁場生成・制御試験を実施した。中央部分隣接6ピークにおけるピーク磁場強度のばらつきは2.7%となり、強磁性体なしで構築したアレイの場合(4.8%)に比べて、磁場ピーク値のばらつきを大幅に抑制できることを実験的に確認した。 また、ビーム入射にかかわる端部磁場補正については、ループ電流モデルにより予測計算を行った。その結果、バルク超伝導体の配列を工夫することで、大幅な改善が期待できることが明らかになった。 以上に示した2つの手法(強磁性体の併用・配列の工夫)が磁場補正に効果的であることを示すことができ、おおむね順調に研究は進んでいる。 試料冷却クライオスタットについては、年度末にほぼ予定通りに納入され、ヘリウムを用いた冷却試験を実施し、冷却が行われていることまでを確認し、次年度以降の研究に支障がない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度導入した、大口径かつ長尺の試料ホルダにバルク超伝導体、磁性体を挿入してビーム入射部分の磁場制御評価を進める。 ただしバルク超伝導体については、当初想定していたメーカーが事業撤退したため、試料の入手に問題が生じる可能性が発生しており、同等以上の性能、サイズでの超伝導体試料入手ができない可能性があり、他社・他機関・による代替製品、さらには内製も含め幅広く検討を進める。 計算については、今年度実施したモデルを元に、大口径化、長尺化した際の端部磁場補正について評価を進める。
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