研究課題/領域番号 |
22H03877
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
井上 伊知郎 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (30783401)
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研究分担者 |
稲葉 理美 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 散乱・イメージング推進室, 研究員 (70785493)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | X線自由電子レーザー / Advanced KBミラー / X線構造解析 / ナノ集光 |
研究実績の概要 |
X線を用いたタンパク質の構造解析では、これまで数10マイクロメートル程度の大型で良質な結晶を作ることが不可欠であった。本研究では、X線自由電子レーザーをナノメートル(nm)サイズにまで極限的に集光した超高強度X線パルスを利用することでnmサイズの極微小タンパク質結晶試料の構造解析を実現する。 具体的には、(i) X線自由電子レーザーから出射された波長 1 AのX線をナノ集光する光学系の開発、および(ii) ダメージの影響を組み込んだX線構造解析法の開発とタンパク質のナノ結晶への応用、を行う。超高強度X線を利用した新しい構造解析技術を確立することで、将来のX線1分子構造解析への第一歩を踏み出す。 2022年度は、X線集光ミラーの作製を開始した。将来的に他のX線自由電子レーザー施設(European XFELやLCLS)へ持ち込んで実験することを考慮して、集光光学系としてAdvanced KBミラーと呼ばれるコンパクトかつ光源の位置ゆらぎに対して鈍感な光学系を採用し、そのデザインを行った。ミラーの作製は2023年度の初頭には無事完了する予定である。 また、ミラーの作製と並行して、高強度X線照射下における物質の原子位置の変位を実験及び理論によって検証した。その結果、X線照射後20フェムト秒の間は原子の変位はわずか0.02オングストローム以下であることが明らかになった。この結果は、X線自由電子レーザーのような強いX線を用いた場合でも精密な構造解析ができることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線自由電子レーザーを安定に集光できるコンパクトな集光光学系の開発を開始した。デザインは完了し、その加工に着手した。コロナの影響のために外形の加工に想定外の日数がかかることとなったが、2023年度初頭にミラーを完成させることができる見込みである。一方で、高強度X線自由電子レーザーを照射下の物質の振る舞いについての実験と理論については、想定以上に進展があり、論文化に結びつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の初頭に、X線集光ミラー(Advanced KBミラー)の表面コーティングを行ってミラーを完成させる。そして、完成したミラーの性能をX線自由電子レーザー施設SACLAを用いて確認する。ミラーの集光性能が予想通りであることを確認した後、ナノ結晶にX線を照射して構造解析を実現する。
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