研究課題/領域番号 |
22H03880
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 真一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子機能創製研究センター, 上席研究員 (40446414)
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研究分担者 |
羽倉 尚人 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (00710419)
土田 秀次 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50304150)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イオン注入 / 量子ビーム科学 / 量子ビット / 欠陥エンジニアリング / 照射欠陥 |
研究実績の概要 |
半導体中にドープしたP ドナーや遷移金属といった不純物原子は、その電子準位を高度に制御することによって、量子計算や量子通信に不可欠な量子ビットとして用いることができる。複数の量子ビットを操る量子デバイスを作製するためには、ナノメートルスケールの特定の位置に量子ビットを必要な数だけ配置しなければならないが、そのためには、ナノメートル精度で位置や数を高度に制御する単一イオン注入技術の開発が不可欠である。本研究では、ワイドギャップ半導体のひとつである窒化ガリウム(GaN)に対し、α 線が入射した際に発生する誘起過渡電流を解析することで、単一イオンヒット検出が可能な条件の検討をおこなった。 n型GaNエピ膜に縦型ショットキーバリアダイオードを形成し、逆バイアス電圧を印加した状態で、241Am のα線(5.486 MeV)が入射した際の誘起過渡電流を検出した。誘起過渡電流はCharge Sensitive Preamplifier (CSP)およびSpectroscopic Amplifier (SA)を用いて電圧信号へと処理し、オシロスコープによって波形の出力をおこなった。その結果、逆バイアス電圧の上昇に伴い電圧信号が増加しており、作製したダイオードで単一イオンが検出できることを確認した。また、得られた信号出力の解析から、量子ビット形成に用いられるエネルギー範囲である100keV以下のイオン注入の検出が可能であることを明らかにした。 次に、マイクロピンホールをつかった簡易マイクロビームの開発に加え、アルミナナノキャピラリの形状解析を行った。前者に関しては、直径1μmφ、アスペクト比50のマイクロピンホールをビームラインに設置し、簡易マイクロビーム形成実験に向けた準備を進めた。後者に関しては、多孔質アルミナの穴形状を電子顕微鏡を用いて観察し、高アスペクト比のナノキャピラリとして使用可能な箇所の選定を行った。その結果、100nmφ以下の多孔質では形状不良が多いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子ビットを形成する試料に対し、単一イオンヒット検出を行うためのデバイス構造を形成し、イオンヒット時に発生する過渡電流によって単一イオンヒットを検出したこと、また、その特性解析から、現状での検出下限を明らかにしたこと、さらに、検出下限を向上させるための見通しを得たことから、予定通り進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発したシステムを組み合わせ、簡易マイクロビームの単一イオンヒット検出を行う。半導体試料の微細領域(10μmオーダーの大きさ)に注入数をカウントしながらイオン注入を行い、レーザー走査型蛍光顕微鏡を用いて形成される量子ビットの発光2次元分布を観察する。同時並行で、希土類イオンビーム加速のためのイオン源の開発を行い、希土類イオンビーム強度、安定性の評価を行う。希土類イオンビームの開発完了後、窒化ガリウムにプラセオジムやネオジムを注入し、その発光特性を評価する。 同時並行にて、シングルナノキャピラリの開発を進める。アルミナ多孔質のナノキャピラリに対し、微細加工技術と金属蒸着を用いて直径1μm未満のシングルキャピラリを形成する。径の異なるシングルキャピラリを複数用意し、イオンビーム透過実験(透過率や発散角の評価)を行う。これまでの調査の結果、100nmφ以下の多孔質ナノキャピラリは形状不良が多いことから、200nmφ程度のキャピラリの開発をまずは進める。
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