研究課題/領域番号 |
22H03882
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40780086)
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研究分担者 |
林崎 規託 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50334537)
小川 博嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60356699)
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60391710)
黒田 隆之助 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, ラボチーム長 (70350428)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | DAA管 / 誘電体加速 / 高誘電率セラミックス |
研究実績の概要 |
本研究は、既存の金属加速管における加速管性能の限界を超える電子加速技術として、高誘電率誘電体の高い電磁場蓄積能力とダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の低二次電子放出係数保護膜技術を用いた誘電体アシスト型加速管(Dielectric Assist Accelerating structure, DAA管)を新たに提案し、既存の常伝導加速空洞の10倍以上高い電力効率を実現しつつ、高加速電界が励振可能であることを実証することを目的とする。 本年度は、高い電力効率と高電界加速を両立するDAA管の実現に向け、特に高誘電率セラミックスの開発に重点的に取り組んできた。DAA管において、比誘電率が高く、誘電損失が小さいセラミックスを用いることで高いシャントインピーダンス(Zsh)が実現できる。今年度は、最も高Zsh化が期待できるBa-Mg-Ta酸化物セラミックスの焼結体製作に取り組んできた。本研究では、含有元素比や添加物質、前処理などを変えたBa-Mg-Ta酸化物セラミックスをセラミックス製造会社等と連携して製作した。その結果、当該物質において誘電損失の増大に寄与する化合物相の発生を抑制しながら目的の化合物の粉体を製作することに成功した。また、小さいサンプルではあるが、焼結密度99%程度で焼結することにも成功した。 長尺DAA加速管構造の高周波設計を実施した。特に、低エネルギーの電子加速においても本加速器技術が適用できるのかを調査するため、電子の入射エネルギーが50 keVを想定した低β多セルDAA管の設計を実施し、僅か50 kWの高周波電力で800 keV以上の電子加速が可能な加速管の設計に成功した。本成果により、非常に小型・省電力の高エネルギーX線源への応用の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、Ba-Mg-Ta酸化物セラミックスの焼結体製作に重点的に取り組み、①誘電損失の増大に寄与する化合物相の発生を抑制しながら目的の化合物の粉体を製作することと②焼結密度99%程度で焼結することにも成功し、想定以上の成果となった。また、長尺DAA加速管構造の高周波設計を実施し、低エネルギーの多セルDAA管の実現可能性を初めて示すことにも成功し、当初の予定以上の成果となった。一方で、DAA管のセラミックセルの保護膜の探索においては、複数の条件評価を実施するに至った。これらの点を総合的に評価した結果、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最重要課題である、高誘電率セラミックスの開発とセラミックセルの保護膜の探索を重点的に取り組む。具体的には、Ba-Mg-Ta酸化物セラミックスを用いた誘電体セルの製作を可能にするため、大型のセラミックス焼結を実施する。また、セラミックセルの保護膜の探索においては、成膜条件並びに表面形状の最適化により低SEY化の条件を明らかにする。上記の研究で得られた成果を用いてDAA管を製作し、高電界試験を通じてよりよいDAA管を検討していく。
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