研究課題/領域番号 |
22H03883
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
田尻 寛男 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 散乱・イメージング推進室, 主幹研究員 (70360831)
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研究分担者 |
山口 明 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (10302639)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 放射光 / 超低温 / 表面・界面 / X線散乱 / ヘリウム / 原子層 |
研究実績の概要 |
本研究では、表面科学と放射光科学が融合した放射光表面構造科学の未到分野である超低温構造物性を開拓するために、放射光X線散乱を用いて1 K程度の超低温表面を原子レベルで観察できる手法の開発を目的としている。1 K近傍かそれより低い超低温環境におけるヘリウム原子吸着系は、二次元超流動をはじめとした低次元量子液体・固体研究の主要舞台であり、さまざまな量子現象が発見・提唱されている。 一方で、主に熱流入の問題から、超低温ヘリウム原子吸着系の構造情報を抽出できるプローブは中性子散乱などごく一部に限られていた。我々はX線と物質の相互作用が他のプローブに比して1桁以上小さいことを逆手にとり、観察対象への熱流入を抑制した原子レベル観察手法として超低温表面における放射光X線散乱法を開発している。 試料温度1 K近傍での放射光X線による表面構造観察を可能とするために、0.1 Wのギフォード・マクマホン型冷凍機とヘリウムの減圧排気を組み合わせた試料冷却機構を構築した。現在1.37 Kまでの試料冷却が可能であり2時間以上最低温度を保持できている。さらに、試料温度を1 K近傍に保持しつつヘリウムガスの定量性を担保した状態で試料表面に導入できる試料セルを製作し試料環境に組み込んだ。 これによって、本研究で取り組む低温物理のプロトタイプであるヘリウム吸着グラファイト系のうち、ヘリウム単原子層(固相)の他、多層構造、整合・不整合相転移などガス吸着量・温度に応じた多様な表面相へのアクセスが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超低温表面における放射光X線散乱は観察対象への熱流入を抑制した原子レベル観察手法として非常に有望である。同手法によるヘリウム原子層観察のために以下のことを実現した。 1)0.1 Wのギフォード・マクマホン型冷凍機とヘリウムの減圧排気を組み合わせた試料冷却機構を構築し1.37 Kまでの試料冷却を可能とした。 2)ガス吸着量の定量化をおこなうために大面積を有するグラファイルからなる吸着セルを製作し試料環境に組み込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
これまでどおり1 K近傍の超低温における放射光表面散乱実験をさらに推進する一方で、グラファイト基板上へのヘリウム吸着に伴う表面散乱強度の変化を定量的に予測するために、我々が独自に開発した計算コードによるシミュレーションを行う。
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