研究課題/領域番号 |
22H03889
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 勝也 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (10380718)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | サイン音 / 視聴覚情報表示 / 接近通報音 / 高齢難聴 / 視聴覚統合認知 / デザイン過程 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,次世代モビリティにおける聴覚情報インターフェースについて,機能的要求と創造的要求について総合的に検討し,統合的な高次のデザインの基盤的知見を体系化することを目的としている。そのための具体的な音響的課題として,高齢者を含む歩行者安全に関わる接近通報音のデザイン(→課題1),および視聴覚情報表示における音デザイン(→課題2)を設定し,実験研究に基づいた知見を蓄積することを計画した。 本年度は,課題1については,接近通報音デザインのための電動車の影響評価に関する基礎検討,高齢難聴によるサイン音認知の困難性の検討などを行った。電動自動車の接近通報音のデザインのためには,その機能や音質の評価のみならず,接近通報音を利用することによる環境影響を評価することが不可欠である。本年度は,予測モデルとしてASJ RTN-Model 2018を対象とし,その予測推計の精度を定量的に評価することを試みた。さらに,電動車単体の音響パワーレベルについても測定を重ね,検討資料を蓄積した。 課題2については,視聴覚情報表示における視聴覚情報の意味的調和・構造的調和が及ぼす影響について複数の実験を通した検討をおこなった。意味的調和については,色や色面積を変化させることによるた視覚情報表示の緊急感と,サイン音のデザインによる聴覚情報の緊急感の意味的調和について,既存の実験データを再分析し,その影響のさらなる考察を行った。構造的調和に関しては,視覚情報表示の提示位置とサイン音の聴感的定位の一致性が,視覚情報探索の精度や難度に与える影響について,複数の実験によって検討を重ねた。 さらに,機能性と美的価値を両立した音のデザインのため,現有しない新たなサイン音を創造する過程を体系化(→課題3)することを計画し,サイン音の設計過程における課題実態や設計過程の分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画にて設定した複数の課題について,いずれも検討が進められており,概ね順調な進展をしているといえる。特に,視聴覚統合認知過程の理解による高度なデザイン基盤の構築については,成果を国際学会で報告し,国際雑誌への投稿も進めた(2023年度中に採録の見込み)。次年度からの研究分担者の増員や外部研究者との連携強化など,次世代モビリティための総体的な音響課題に対する高次のデザイン基盤の構築という点でも順調な進展をしていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
計画している各課題についての検討は,計画に則って概ね順調に進行しており,次年度以降も継続してさらなる検討に取り組んでいく。課題2に位置づける視聴覚統合認知の理解に基づく聴覚情報インターフェースデザインについては,次年度からは,本課題のもとで実績を積み学位を取得した中 貴一氏(東京大学・助教)を新たに研究分担者に迎え,さらなる研究の発展を目指す。課題1に位置づける高齢難聴が聴覚情報インターフェースの認知に及ぼす影響の検討,課題3に位置づけるサイン音デザイン過程の分析についても,外部の連携研究者との協働も含めて引き続き検討に取り組む。
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