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2023 年度 実績報告書

地域水系基盤概念に基づいた水インフラとともにある暮らしの再生デザイン手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H03894
配分区分補助金
研究機関早稲田大学

研究代表者

佐々木 葉  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00220351)

研究分担者 中村 晋一郎  名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30579909)
福島 秀哉  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 客員連携研究員 (30588314)
福井 恒明  法政大学, デザイン工学部, 教授 (40323513)
二井 昭佳  国士舘大学, 理工学部, 教授 (40459011)
林 倫子  関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (60609808)
星野 裕司  熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (70315290)
山口 敬太  京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80565531)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード地域水系基盤 / 水インフラ / デザイン手法 / まちづくり / 地域景観
研究実績の概要

本研究課題は、水インフラのデザインを単に施設的、景観的な側面から考えるのではなく、地域水系基盤という概念に基づくことで、利用主体の実践による地域課題の解決に資するデザイン手法として開発するため、以下の2点を具体的な研究目的としている。
①地域水系基盤の歴史的変化分析にもとづく地域のツボの抽出手法
②現代の地域水系基盤を活かした象徴的な実践行為のプログラムデザイン手法
2023年度は各フィールドにおけるこれまでの蓄積と2022年度の調査分析をもとに、ターゲットとなるツボを明確にした現地調査を行うとともに、②として調査成果の表現媒体のデザインを用いた地元住民とのコミュニケーションを通じて、地域資源としての水系基盤の価値の明確化を行った。具体的な内容は進捗状況に示すが、いずれのフィールドにおいても、地域住民、自治体への調査結果の報告や協働的な活動を行うことで、地域のステークホルダーの意識や行動に変化が現れ、現代では必ずしも必要とされていなかった地域水系基盤の再価値化がはかられた。こうした成果がみられたのは、着眼した地域水系基盤が元来地域の生活に根ざしたものであったこと、それを単独施設としてではなくネットワークや類似施設との関連性のなかで客観的な調査データとともに示したこと、物理的な施設としてだけでなくその利用、管理についての調査データを示したこと、これらの成果をビジュアルにわかりやすく表現したこと、といった本研究課題の特色によるものと考えられる。つまり本研究課題で開発しようとしているデザイン手法の有効性が、複数のフィールドでの実践によって一定程度示されたといえる。
これらの研究活動の成果は、土木計画学研究発表会における企画セッションをはじめとする論文発表を実施するとともに、研究代表者の研究室ウエブサイトにて研究活動の状況を公開した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

各フィールドにおける2022年度の調査分析によって、地域課題の解決につながる地域水系基盤の象徴的なターゲットが明らかとなってきたため、それを核とした現地調査を進めた。新潟県新発田市古太田川では、「かわど」と「かわばた」というツボとなる要素をめぐるデザインカタログとエピソード収集、およびプレイスメイキングを取り込んだ体験機会の提供を実践した結果、行政依存であった地元意向に変化がみられた。山形県長井市では、文化的景観の構成要素である水路の仕組みと町場形成との関係を調査分析し、水路の価値を伝えるパンフレットとして提示した結果、地域資源としての価値認識が高まった。滋賀県犬上郡豊郷町では選奨土木遺産である龍ケ池揚水機場の調査結果を町主催のシンポジウムにて共有した結果、当初保存に消極的であった状況が変化し、2024年度の世界かんがい施設遺産の候補施設に推薦、選定された。島根県隠岐の島西郷港周辺地区では、「オリト」という集落と河川をつなぐ路地空間を地域資源として発見し、地域住民と共有した結果、まちづくりに向けた機運醸成がみられた。これらから、生活の用に根ざした地域水系基盤の象徴的な要素が価値再生のツボとなることが確かめられた。
その他、氾濫解析を行うことで、歴史的に形成された水と共にあるまちの空間構造上の特徴を明らかにすることを、山形県大江町左沢地区の最上川、熊本県人吉市の球磨川において実施し、災害復興デザインの可能性を広げるための基礎情報を提示した。また、兵庫県西播磨の揖保川流域を対象に広域な地域間連携による地域資源の編集という手法を仮説的に提示し、これに基づくに調査研究を進めた。
以上のように、地域水系基盤デザインの枠組みの有効性を確認することができ、その際のプログラムデザインの具体的なパタンの抽出につながる成果を蓄積することができた。

今後の研究の推進方策

最終年度となる2024年度は以下のように進める。まず地域のステークホルダーの意識と行動に具体的な成果が現れ始めている各フィールドでの実践的調査を継続する。その際、地域水系基盤が有する多面的な価値を活かすよう、プログラムデザインの高度化をはかる。新潟県新発田市の古太田川では、生き物に着目するため全国的に活動している「水辺の小さな自然再生」と連携した実践を行う予定であり、引き続き地元小学校の授業プログラムとしての位置付けを具体化する。災害復興の議論が進む熊本県人吉市、山形県大江町では、計画の進捗にあわせながら、まちにおける地域水系基盤としての河川の概念を深めるよう言語化していく。また水系、流域の連携というマクロなプログラムデザインの可能性を広げるため、地域水系基盤ネットワークの理解に資する表現媒体のデザインの検討を、ケーススタディを通じて進める。このように引き続き各フィールドベースでデザイン実践を進めつつ、スケールおよび主体の連携を拡大していくことで、デザイン手法としての展開を試みる。
続いて、これまでの成果をもちよった集中的な議論によって、フィールドのタイプごとの整理と手法の普遍化を図る。この作業では適宜、研究組織以外の専門家、実践家の参加も得る。これらの共創的な議論を経た上で、デザイン手法としての体系化と実践事例集としての取りまとめを行い、「水とともにある暮らしの再生のための地域水系基盤デザインノート」の作成と公開シンポジウムに繋げていく。

  • 研究成果

    (30件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (18件) (うちオープンアクセス 16件、 査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 亀岡市における流域治水時代のまちづくりの試み2024

    • 著者名/発表者名
      山口敬太・武田史朗
    • 雑誌名

      RIVERFRONT

      巻: 98 ページ: 12-15

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Designing the Value of Water Infrastructure for Sustainable Regional Inheritance: A Case Study in the Lowland Wetlands of Niigata, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Yoh SASAKI
    • 雑誌名

      Proceedings of 2023 International Conference of Asian-Pacific Planning Societies

      巻: - ページ: 58-67

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 低湿地の変遷と価値の変容に関する研究-埼玉県加須市を対象として-2023

    • 著者名/発表者名
      大塚奈々・二井昭佳
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-02

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 東京都江東区深川地域における河川および沿川市街地の変遷と特徴2023

    • 著者名/発表者名
      緒方陸人・佐々木葉
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-03

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 隠岐の島西郷港周辺地区の河川利用の変遷と水辺景観形成2023

    • 著者名/発表者名
      渡邉真由・福島秀哉・福井恒明
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-04

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 重要?化的景観の価値保全と治?計画の両?-?形県?江町百??地区を対象に-2023

    • 著者名/発表者名
      神山謙悟・鴨潤矢・岡田一天・福井恒明
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-05

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 防災と地域の魅力づくりを両立する治水施設に関する考察~霞堤に着目して~2023

    • 著者名/発表者名
      星野未葉・二井昭佳
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-06

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 河川利用実態の流域間比較2023

    • 著者名/発表者名
      宮田比奈・星野裕司
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-07

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] まちづくり治水整備に向けた河川空間の整備主体に関する研究-ドイツ・NRW州ケルン市の取り組みを対象として-2023

    • 著者名/発表者名
      蟻川優人・二井昭佳
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-09

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ドイツ・シュヴェービッシュ・グミュントにおける道路・水辺空間再編による都市再生2023

    • 著者名/発表者名
      木村優希奈・二井昭佳
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-10

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 地域水系基盤のデザインに向けた水利用施設の実態把握 -新潟県新発田市古太田川のカワドに着目して-2023

    • 著者名/発表者名
      結城拓海・麥廣之・塩山祈・長澤歩・佐々木葉
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-13

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 生態系サービスの社会的価値に対する定量的評価手法に関する研究レビュー2023

    • 著者名/発表者名
      韓煜明・佐々木葉
    • 雑誌名

      土木計画学研究・講演集

      巻: 68 ページ: 23-14

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 龍ケ池揚水機場の井戸構造2023

    • 著者名/発表者名
      林倫子・尾﨑茉央・安室喜弘・窪田諭・加藤直子
    • 雑誌名

      土木史研究・講演集

      巻: 43 ページ: 329-336

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 亀岡市における流域空間デザイン検討会議とその提言について2023

    • 著者名/発表者名
      武田史朗・山口敬太・花岡和聖・並河杏奈・中島秀明・焦英楠・中村恭輔
    • 雑誌名

      歴史都市防災論文集 = Proc. of urban cultural heritage disaster mitigation

      巻: 17 ページ: 231-236

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 旧龍野城下町における歴史的地区の古民家再生とまちづくり会社の役割2023

    • 著者名/発表者名
      溝口徳昭・山口敬太・谷川陸・川崎 雅史
    • 雑誌名

      都市計画論文集

      巻: 58 ページ: 1584-1591

    • DOI

      10.11361/journalcpij.58.1584

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Issues and Strategies for Designing Flood Resilient Public Space to Achieve a Balance between Public Amenity and Stormwater Management Infrastructure2023

    • 著者名/発表者名
      Liu Xiaodan; Keita Yamaguchi; Masashi Kawasaki
    • 雑誌名

      Urban and Regional Planning Review

      巻: 10 ページ: 197-223

    • DOI

      10.14398/urpr.10.197

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 安土未来づくりー地域資源資源の協働管理に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      山口敬太
    • 雑誌名

      造景2023(建築資料研究社)

      巻: - ページ: 20-21

  • [雑誌論文] 滋賀の水害史と水害に強いまちづくりの取り組み2023

    • 著者名/発表者名
      林倫子
    • 雑誌名

      造景2023(建築資料研究社)

      巻: - ページ: 22-26

  • [学会発表] Designing the Value of Water Infrastructure for Sustainable Regional Inheritance: A Case Study in the Lowland Wetlands of Niigata, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Yoh SASAKI
    • 学会等名
      Proceedings of 2023 International Conference of Asian-Pacific Planning Societies
    • 国際学会
  • [学会発表] 低湿地の変遷と価値の変容に関する研究-埼玉県加須市を対象として-2023

    • 著者名/発表者名
      大塚奈々・二井昭佳
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 東京都江東区深川地域における河川および沿川市街地の変遷と特徴2023

    • 著者名/発表者名
      緒方陸人・佐々木葉
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 隠岐の島西郷港周辺地区の河川利用の変遷と水辺景観形成2023

    • 著者名/発表者名
      渡邉真由・福島秀哉・福井恒明
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 重要文化的景観の価値保全と治水計画の両立―山形県大江町百目木地区を対象に2023

    • 著者名/発表者名
      神山謙悟・鴨潤矢・岡田一天・福井恒明
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 防災と地域の魅力づくりを両立する治水施設に関する考察~霞堤に着目して~2023

    • 著者名/発表者名
      星野未葉・二井昭佳
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 河川利用実態の流域間比較2023

    • 著者名/発表者名
      宮田比奈・星野裕司
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] まちづくり治水整備に向けた河川空間の整備主体に関する研究-ドイツ・NRW州ケルン市の取り組みを対象として-2023

    • 著者名/発表者名
      蟻川優人・二井昭佳
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] ドイツ・シュヴェービッシュ・グミュントにおける道路・水辺空間再編による都市再生2023

    • 著者名/発表者名
      木村優希奈・二井昭佳
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 地域水系基盤のデザインに向けた水利用施設の実態把握 -新潟県新発田市古太田川のカワドに着目して-2023

    • 著者名/発表者名
      結城拓海・麥廣之・塩山祈・長澤歩・佐々木葉
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 生態系サービスの社会的価値に対する定量的評価手法に関する研究レビュー2023

    • 著者名/発表者名
      韓煜明・佐々木葉
    • 学会等名
      第68回土木計画学研究発表会・秋大会
  • [学会発表] 龍ケ池揚水機場の井戸構造2023

    • 著者名/発表者名
      林倫子・尾﨑茉央・安室喜弘・窪田諭・加藤直子
    • 学会等名
      第43回土木史研究発表会

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公開日: 2024-12-25  

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