研究課題/領域番号 |
22H03914
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
香田 啓貴 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70418763)
|
研究分担者 |
森田 尭 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10837587)
中村 克樹 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 教授 (70243110)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 音声コミュニケーション / 発声 / 同期 / 同調 / 交替行動 |
研究実績の概要 |
初年度計画に対応する計画に関しては,サル自由会話時の発声行動の計測系環境の整備と構築を進めた。 ヒト行動進化研究センターで,コモンマーモセットを対象にした実験環境を整備し,実施可能な状態になるようにするため,分担者の大学院生学生の参加と協力を得て,データ収集を進めるためのデータ構築を行った。2個体場面での発声のやりとり(音声交換)を,非侵襲に記録できる装置の配備を進め,音声のタイプごとに応答と反復を繰り返す発声行動の時間的規則性が異なることが示唆されるデータを得ることができた.特に,長距離用の個体間コミュニケーションに利用されると考えらえてきた音声タイプについて,従来のヒトやニホンザルなどで確認されてきた親和的な音声コミュニケーションにおける音声交換の時間規則とは逸脱する予備的結果が得られており,その機能的な意義づけを進めている.また,主題となる霊長類発声行動・学習の相同性を広範な種で比較して,その特異性を明らかにするために,鳥類やヒトを含む他動物の比較を進めることとし,サル以外の動物のデータやヒトの発声運動のデータも収集を進めた.その結果,霊長類で見られる発声交替現象と,鳥類で見られる発声交替現象では,他個体の発声タイミングの予測という点で,根本的な種差が認められることが判明した.これらの結果は,個体間コミュニケーションにおいて,個体の応答が社会的な報酬として機能するかどうかに関しての種差に起因すると考察を進めており,動物の社会集団との対応関係に由来するという新規な仮説を整理し,目下その検証に挑んでいる.また,モデル構築に必要な計算機の導入を進め,発声の方位と顔むきを検出するための深層学習モデルの構築を進め,精度検証に移れる段階になった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計算機の導入にあたって半導体不足により適切な装置の納品が遅れた点や,研究実施に必要と考えた人材の確保が思うように進まず,参画研究者間での研究実施が円滑に進まないこともあり,全体に計画が遅れた.
|
今後の研究の推進方策 |
年度途中から,並行して進めた他種への応用と比較研究が予想外の興味深い結果を出しつつあり,種間比較という軸を含めることで,同期・同調メカニズムの生物学的理解(進化とメカニズムの双方)につながる展開を推進できる.代表者環境でも多くのデータ分析が進むため,挽回を計る.また,発声行動のデータから,発声個体の顔むきを推定するモデルや,個体行動の将来予測を行うモデルの構築が進んだため,これまでにえらえたデータを分析することで成果発表の点でも挽回を計る.
|