研究課題/領域番号 |
22H03915
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
本田 秀仁 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (60452017)
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研究分担者 |
香川 璃奈 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10824675)
白砂 大 追手門学院大学, 心理学部, 特任助教 (00908577)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 意思決定 / 合理性 / ブースト |
研究実績の概要 |
2022年度は、判断プロセスに関する認知実験を実施し、その結果を詳細に分析した。特に、以下の2つのポイントに焦点を当てて研究を行った。 まず第一に、黒と白で構成されるグリッド画像を提示し、「黒の割合は50% より高いか低いか?」という判断を求める認知実験を実施した。この実験では、判断に至るまでの心理状態をマウストラッキングの手法を用いて分析した。結果として、誤りが生じる際に観察されやすいマウス軌道のパターンが特定された。特に、衝動的に判断を行うことで誤りが生じやすくなることが明らかになった。また、Drift diffusion modelを用いた認知モデリングの手法によって、正確な判断、ならびに不正確な判断になる際の証拠蓄積に関する潜在的なプロセスについて詳細に分析を行った。結果として、モデルのパラメータから、意思決定プロセスの類型化ができ、合理的な判断を阻害する要因を特定することができた。 第二に、看護師、専門医を対象に膀胱鏡画像を使用した疾病診断の課題を実施した。この課題では、診断判断における時間の影響を詳細に分析し、誤判断が生じるパターンとその個人差を明らかにすることを主目的として、分析を進めた。結果として、診断判断にかける時間が短い場合、特定の画像において、誤判断率が高まることが確認された。一方、長い時間をかけて判断した場合はこのような誤判断が減少することが明らかになった。 以上の研究により、判断にかけた時間(認知的リソースの指標)と正確性との関連性が明らかになり、個人の意思決定・判断プロセスを類型化するための基礎的な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、判断時間と正確性の関係について、資源合理性に基づく分析フレームワークを構築している。これは人間の認知的コストを考慮し、合理的な判断を定式化するものである。このフレームワークに基づく人間の判断データの分析を進めるために、一般サンプルと専門家サンプル(医学部生、看護師、医師)に対して認知実験が完了している。この中で、マウストラッキングを中心に認知プロセスの分析が完了し、詳細な認知プロセスが明らかになった。さらに、当初予定していなかった集団意思決定の正確性を高めるための個々の判断の活用方法について、計算機シミュレーションを用いた理論的な考察を進め、またこれに基づいて認知実験を実施予定であり、そのための準備がスムーズに進んでいる。 以上のことから、本研究は順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年は以下に示す3つの課題について取り組む。 まず、最初の課題として、リスク下での意思決定課題を実施する。この課題では、正確な判断を生成するヒューリスティック、誤りを生むヒューリスティック、またはヒューリスティックではなく確率と利得の情報を統合するなど、意思決定プロセスの多様な特徴を明らかにする。 次に、二つ目の課題として、今年度実施したグリッド判断課題を継続する。今年度は特に、反応時間と正確な判断との関係(例:より正確な判断を行うためには、どの程度の判断時間が必要かということ)についてさらに理論化を進め、個人特性や課題の性質に応じた、正確性をより高める判断時間を定量的に分析し、認知実験を行いながら検証を進める。 三つ目の課題では、前年度に続き、医学部生、看護師、専門医に対する膀胱鏡画像疾病診断課題を実施する。今年度は特に、誤った判断を減少させるブースト法(例:最終的な判断を行う前に、1秒以上の考慮時間を設ける)の効果について、実験的に検証する。これを通じて、認知的負担を減らし、判断の正確性を高めるブースト法を分析する。 以上のように、今年度は意思決定プロセスの多様性の実験的検証、判断にかける時間(認知的リソースの指標)と意思決定および判断の正確性の関係の理論的分析とその実験的検証、そしてそれらの知見に基づく合理的意思決定促進法の効果についての検証を進める。
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