研究課題/領域番号 |
22H03918
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 英司 北海道大学, 大学病院, 教授 (60374724)
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研究分担者 |
柚木 俊二 北海道大学, 産学・地域協働推進機構, 特任教授 (20399398)
津田 真寿美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431307)
王 磊 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (70637975)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 合成コラーゲン線維 / 一軸配向化 / 基質産生促進機序 |
研究実績の概要 |
研究代表者は先行する研究において、生体に無細胞化した腱組織(一軸配向コラーゲン線維束)を移植すると、そこへ侵入した間葉系幹細胞(MSC)が腱・靱帯線維芽細胞に分化し、I型コラーゲンを含む細胞外マトリクス(ECM)が豊富に産生されて腱・靱帯組織が再生されることを発見した。しかし何がMSCの分化を開始させるのか、その分子機序は未だ解明されていない。研究代表者らは、独自の研究結果と様々な配向化材料が有する対細胞効果に関する世界の研究に基づき、「移植した一軸配向コラーゲンのcomposition and organization (構成と組織構造)が、そこに接着するMSCの腱性線維芽細胞への分化とECM関連遺伝子の発現を誘導し、腱性基質産生を促進する」という仮説を立てた。本研究の目的はこの仮説を証明することである。 我々が独自に開発したコラーゲンの延伸紡糸法により、生体腱を構成するコラーゲンファイバー(直径~20micrometer)に比肩する細さを有し、線維が表層のみならず内部まで配向したコラーゲンMFの高速成型に成功した。この配向コラーゲンMFを束にした合成コラーゲン人工腱は湿潤状態でヒトACL(接線弾性率:283±114MPa、破断応力:45.7±19.5MPa)の約半値(137±7 MPaおよび13.8±1.9 MPa)に達し、実用的なレベルへと到達した。家兎膝蓋腱モデルを用いたin vivo評価により、ファイバー間隙が細胞浸潤を促し、埋植後16日で表層から徐々に生分解を受ける生体内安定性を示すことが明らかになった。延伸紡糸で作製したコラーゲンMFの太さ、架橋度、および緻密性は制御可能であり、理想的な合成コラーゲン人工腱を創製する道が拓けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強靭な合成コラーゲン人工腱を創製するためには、構造要素となる微細な線維配向コラーゲンマイクロファイバーを高速で製造する技術が必須である。これまで湿式紡糸技術が研究されてきたが、線維配向はMF表層のみに生じ、製造速度も十分でなかった。そこで本研究では、我々が初めて発見した「臨界線維化濃度(CFC)」近傍の中性コラーゲン水溶液を原料に用いて、熱可塑性樹脂の溶融紡糸に似た延伸紡糸技術を開発した。得られた微細なコラーゲンマイクロファイバーから人工腱を作製し、湿潤状態での力学特性を評価するとともに家兎膝蓋腱埋植モデルにより組織侵入性を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
実験1:2次元培養における接着コラーゲン面の一軸配向化が線維芽細胞のECM関連遺伝子発現に対して与える効果を明らかにする 実験2:2次元培養における接着コラーゲン面の一軸配向化がMSCの線維芽細胞への分化とECM産生に対して与える効果を明らかにする 実験3:一軸配向化コラーゲン線維束およびGAG複合化線維束を用いた3次元培養がMSCのECM産生能に対して与える効果の2次元培養との比較を行う 実験4:一軸配向化コラーゲン線維束およびGAG複合化線維束のin vivo移植によるvitroとvivoにおける結果の相同性の確認を行う
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