研究課題/領域番号 |
22H03919
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
吉原 利忠 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (10375561)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | りん光 / りん光寿命 / イリジウム錯体 / 酸素 / 腫瘍 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、イリジウム錯体を基軸とした血中滞留型および細胞蓄積型酸素プローブ分子を開発し、不均一環境にある‘がん腫瘍’の酸素濃度(分圧)分布を,共焦点りん光寿命イメージング顕微鏡を用いて、単一細胞レベルの分解能で計測およびライブイメージングすることである。 令和5年度は、マウスに投与された血中滞留型Ir錯体のりん光寿命から酸素分圧の絶対値を求めるため、生理食塩水やマウス血漿を用いて検量線の作成を行った。この際、温度による影響を明らかにするため、異なる温度においても検量線を作成した。これらの検量線とりん光寿命から腫瘍の酸素分圧を求めたところ、場所場所によって酸素分圧が大きく異なることが明らかとなった。特に腫瘍の中心部付近では血管量が少なく、その結果、10 mmHg以下の低酸素状態になることが示された。また、細胞蓄積型Ir錯体と血管を可視化する蛍光性試薬を用いて、血管量と周辺腫瘍組織との酸素分圧の関係を明らかにした。その結果、腫瘍組織内の血管量は不均一であり、血管量の多いところは組織細胞内の酸素分圧が高い一方、血管量の少ないところに低酸素領域が存在することが可視化された。さらに、細胞蓄積型Ir錯体を用いて血管からの距離依存的な酸素分圧勾配の定量化を試みた。その結果、血管近傍にある腫瘍細胞の酸素分圧は高く、血管壁から離れるにつれて酸素分圧が徐々に減少し、約100~150 μm離れると酸素分圧が10 mmHg以下になることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、マウスに投与された血中滞留型Ir錯体のりん光寿命から酸素分圧の絶対値を求めるための検量線を作成した。これらの検量線とりん光寿命から腫瘍の酸素分圧を求めたところ、場所場所によって酸素分圧が大きく異なることが明らかとなった。特に腫瘍の中心部付近では血管量が少なく、その結果、10 mmHg以下の低酸素状態になることが示された。また、組織細胞蓄積型Ir錯体のりん光寿命計測から、腫瘍組織内の血管量の不均一性と酸素分圧の関係や、血管からの距離依存的な酸素分圧勾配を単一細胞レベルで定量化した。 以上の結果は、令和5年度に達成すべき目標であることからおおむね順調に研究が遂行できたと考えている。現在、成果を投稿論文にまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、深部腫瘍細胞内の酸素分圧の計測を目指して、近赤外りん光を示すカチオン性イリジウム錯体を開発する。昨年度と同様に開発した酸素プローブを担がんマウスに投与して、りん光寿命イメージング顕微鏡を用いて、イメージング画像を取得する。腫瘍の種類は、大腸がん、乳がん、肺がんなど固形腫瘍が形成できるものを用いる。得られた画像と検量線から深部腫瘍細胞内の酸素分圧の絶対値を算出する。また、血管と腫瘍細胞の同時イメージングでは、これまでに開発した血中滞留型緑色Ir錯体と、本年度開発する近赤外りん光を示す細胞蓄積型赤色Ir錯体を用いる。
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