研究課題/領域番号 |
22H03923
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 満 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (70737460)
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研究分担者 |
田畑 泰彦 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (50211371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 血小板 / 徐放化技術 / DDS / ゼラチン粒子 / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
本研究は、DDS技術を駆使することで、血小板製剤が抱える保存期間と保存方法の問題を克服した血小板様製剤を創出することである。具体的には、血小板から血小板膜成分を単離し、ゼラチンナノ粒子の表面に血小板膜を被覆することで、長期保存が可能な血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子を開発することを目指す。また、血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子に炎症細胞や免疫細胞に対する遊走タンパク質を内包することで、DDS技術に基づき、組織炎症の制御や組織の再生誘導能を検証することでその有効性を検証する。 2022年度は、ゼラチンのコアセルベートを形成させた後、化学架橋を施すことで、粒子径が200nm程度のゼラチン ナノ粒子を作製した。また、マウス下大静脈より血液を回収した後、単離した血小板から細胞膜成分を抽出し、ゼラチンナノ粒子と混合した後、押出成型することでゼラチンナノ粒子の表面に血小板の細胞膜を被覆した。血小板膜被覆による粒子サイズの変化をを動的光散乱法にて評価したところ、血小板膜の被覆によって粒子サイズの増大が認められた。血小板マーカータンパク質であるCD41とCD61を指標に血小板膜の被覆を評価したところ、CD41、CD61ともに存在が認められたことから、ゼラチン粒子表面に血小板膜成分が存在することが明らかとなり、また、その配向は天然の血小板と同様なものが存在することが明らかとなった。現在、クライオ電子顕微鏡を用いた血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子の形態的特徴の解明にも着手しはじめている。血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子の崩壊性、酵素耐性を緩衝水溶液中で評価したところ、血小板膜の被覆によってコラゲナーゼによるゼラチン粒子の崩壊速度が減弱したことからゼラチン粒子への被覆が成功したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度では、ゼラチンナノ粒子への血小板細胞膜の被覆する方法を確立し、分子生物学的手法により血小板膜の被覆を確認することができた。クライオ電子顕微鏡を用いた形態観察は研究当初の計画より遅れてはいるものの、予備的な知見も集積されつつあることから、2023年度の研究遂行に向けた準備は整っていると考えられる。また、研究当初の計画より先んじて、血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子の崩壊性、酵素耐性を評価できたことからも、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、引き続きクライオ電子顕微鏡観察により単粒子解析を行い、機械学習やAIを用いて血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子の二次元分類を行うことで形態的特徴を明らかにする。 また、2023年度は血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子の生物学的機能評価を中心的に研究を実施する。ゼラチンナノ粒子の表面に被覆した血小板の細胞膜の血小板膜タンパク質の活性について、コラーゲンやフィブリノーゲンとの結合能を評価することで調べる。また、ゼラチン粒子に内包した遊走タンパク質の徐放性について調べる。また、血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子と新鮮血液を混合し、血液凝固試験を実施することで機能評価を行う。 さらに、ゼラチンナノ粒子に間葉系幹細胞遊走因子であるSDF-1を含浸することでSDF-1含有ゼラチンナノ粒子を調製する。緩衝水溶液や細 胞培地中でのSDF-1含有血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子からのSDF-1の徐放性を調べるとともに、リソソームやコラゲナーゼにより血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子を崩壊することによる徐放化プロファイルの変化も評価する。血小板膜被覆ゼラチンナノ粒子を4°Cで保存した後、1ヶ月~ 数ヶ月に渡り血小板膜の機能を評価する。
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