研究課題/領域番号 |
22H03930
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
神 隆 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (80206367)
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研究分担者 |
M.M Mahadeva・Swamy 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (60830031)
精山 明敏 国際教養大学, デザイン創造・データサイエンスセンター, 特任教授 (70206605)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒト乳がん / 光診断 / 短波赤外 / 生体蛍光イメージング / 非侵襲イメージング / 分子イメージング / 生体の第2光学窓 |
研究実績の概要 |
生体での分子イメージングを短波長赤外線(SWIR、900~1400 nm)領域に拡張することで、組織の自家蛍光や散乱が少ないため、生体内の生体分子を組織深部まで可視化することができる。食品医薬品局(FDA)が承認し、臨床試験が行われている近赤外(NIR)プローブを見ると、インドシアニングリーン(ICG)とその類似体のみが生物医学的応用として承認されている。励起波長が800nm未満であるため、これらのプローブは組織深部への浸透や非侵襲的な蛍光イメージングが制限されている。本研究では、ICGをベースとしたπ共役拡張シアニン色素ICG-C9およびICG-C11を合成し、それぞれ水中での発光波長が922 nmおよび1010 nmである生体適合性および水溶性の近赤外発光プローブとして開発した。また、ICG-、ICG-C9-およびICG-C11をベースとした蛍光標識剤を合成し、SWIR分子イメージングプローブの開発を行った。ICG、ICG-C9、ICG-C11の蛍光を利用して、生きたマウスで表面受容体(EGFRとHER2)と腫瘍血管系を可視化することにより、乳がんの3色SWIR蛍光イメージングを実証した。さらに、ICGを結合させた抗癌剤KadcylaとICG-C9またはICG-C11を結合させたアネキシンVを用いて、乳がんアポトーシスの2色SWIR蛍光イメージングに成功した。この研究成果は、多重蛍光分子イメージングにおける一般的な戦略を提供するものである。SWIR蛍光分子イメージングを示すことで、ICGおよびICGベースのπ共役拡張シアニン色素が、バイオメディカル用途の標準的なSWIR蛍光色素となることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の研究計画では、理化学研究所生命機能科学研究センター所属のチームリーダー(研究室主催者)として研究を遂行する予定であったが、2023年3月31日をもって研究チームが解散となり、職制もチームリーダー(管理職)から上級研究員(一般職)となり、本研究への参加人員(研究員、技術職員等)の大幅な変更が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
乳がん腫瘍の3次元蛍光イメージング(蛍光トモグラフィー)技術の開発のためには、励起波長および短波赤外蛍光波長における乳がん及び正常組織での光学特性(散乱係数、吸収係数、異方性パラメータ、屈折率)を知る必要があります。これまでモンテカルロシミュレーションを用いて短波赤外領域の乳房組織での光学特性の評価法を開発してきました。本研究では、生体深部への到達距離、生体深部からの蛍光強度およびレーザーパワー依存性など光学特性のパラメータを詳細に検討します。様々な大きさ・深さに設定した乳がんモデルを含む組織ファントムモデルを実測して光学系の最適化をはかり、3次元画像化のための励起、検出系を構築します。 早期乳がんの検出には細胞レベルの空間分解能をもつイメージング装置が必要であり、生体組織における短波赤外蛍光の吸収・散乱特性に最適化した励起、検出系および高輝度な短波赤外蛍光プローブの設計が求められます。短波赤外蛍光イメージング装置に関しては、申請者がこれまでに開発してきたプロトタイプの小動物用の短波赤外蛍光実体顕微鏡装置で約15ミクロンの空間分解能(最大観測視野2cm)を実現しています(RSC Adv. 4, 41164, 2014)。本研究では、イメージング用カメラメーカーとの共同研究により、ヒトを対象とし、た、マクロからミクロまで撮影可能な生体多色蛍光イメージング装置を開発します。
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