研究課題/領域番号 |
22H03942
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
中澤 浩二 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (00304733)
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研究分担者 |
藪 浩 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (40396255)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オルガノイド / 三次元組織体 / ハニカムフィルム / 血管ネットワーク / 肝細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、新しい三次元組織化培養技術として、ハニカム状の規則的微細孔を有する多孔フィルム内に肝細胞と毛細血管網が共培養された高次な肝組織体(肝オルガノイド)を構築し、その効果と有効性を明らかにすることを目的としている。本年度は、ハニカム多孔フィルム孔内に形成される毛細血管網の高度化およびハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドの構築に取り組んだ。 毛細血管網の高度化に関する取り組みでは、VEGFなどの血管誘導因子やコラーゲンなどの細胞外マトリクスを積極的に添加することにより、ハニカム多孔フィルム孔内における血管様ネットワークの発達が促進されることを見出した。その中でも、マトリゲルの添加は形成されるネットワーク構造の高度化に非常に効果的に作用した。 ハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドの構築には、血管内細胞(HUVEC)、脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)、肝細胞を同時にハニカム孔内に導入する「一挙構築法」よりも、血管網を構築させたハニカム孔内に肝細胞を導入する「段階的構築法」の方が優れることを明らかにした。また、ハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドはハニカム多孔フィルム/肝細胞よりもアルブミン分泌や薬物代謝活性を良好に維持できることを見出した。 以上の結果から、ハニカム多孔フィルムを用いた血管網導入肝オルガノイドの構築法を確立するとともに、その基本特性を明らかにすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、(1)ハニカム多孔フィルム孔内に形成される毛細血管網の高度化、(2)ハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドの構築であった。 (1)については、VEGFなどの血管誘導因子やコラーゲンなどの細胞外マトリクスの添加によって、ハニカム多孔フィルム孔内における血管様ネットワークの形成とその発達がより効率的に行われることを見出した。 (2)については、血管網を構築させたハニカム孔内に肝細胞を導入する「段階的構築法」を確立し、毛細血管網導入肝オルガノイドを安定的に作製する手段を確立した。また、ハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドはハニカム多孔フィルム/肝細胞よりもアルブミン分泌や薬物代謝活性を良好に維持できる優れた培養技術になりうることも明らかにした。これらの結果より、(1)と(2)の技術を組み合わせることで肝オルガノイドとしての基本ユニット技術はほぼ確立できた。 以上、本年度の実施内容はほぼ予定通りに進行しており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2024年度は、以下の項目に取り組む。 (1)血管様ネットワーク構造の経時解析: 培養経過に伴うハニカムフィルム孔内における血管様ネットワーク構造の変動評価は未解決のままである。そこで、経時的な血管様ネットワーク構造変化の解析を進める。また、血管誘導因子や細胞外マトリクスの刺激がネットワーク構造変化に与える効果も解析する。 (2)肝オルガノイドの解析: 「段階的構築法」によって構築したハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドの培養下における特徴づけを行う。血管網や導入肝細胞の密度、細胞外マトリクス添加などが肝機能に与える効果、さらには培養経過に伴う肝機能発現の変動などを評価する。また、肝オルガノイドが高機能発現を維持できるメカニズムの解明も試みる。 (3)移植用肝オルガノイドの作製と生体親和性の評価: ハニカム多孔フィルム/血管網導入肝オルガノイドを一つのユニットとし、そのユニットを複数枚積層化させた移植用肝オルガノイドを作製する。血管網構造を有する肝オルガノイドと有さない肝オルガノイドをマウス皮下組織にそれぞれ移植し、生体組織との結合性や生着性、さらには生体側と移植オルガノイド側の血管網融合などを評価する。この取り組みを通して、オルガノイド内血管網設計の優位性や重要性を明らかにする。 以上のような検討を進めることで新しい肝オルガノイド技術を確立する。 これらの実施予定内容は、ほぼ当初の計画通りである。
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