研究課題/領域番号 |
22H03943
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮田 昌悟 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70376515)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 癌細胞スフェロイド / アガロースゲル / 圧縮応力 / 結腸線癌 / 子宮頸がん |
研究実績の概要 |
癌細胞は健常組織中に特異的に発生し,固形がんでは細胞塊を形成して増殖,浸潤,多臓器への転移へと進行する.これらの過程では癌組織と周囲の力学的環境との関連が報告されている.本研究では癌発生初期の力学的環境の変動に着目し,癌細胞の上皮-間葉形質転換に与える影響を解明することを目的とする. 1年目はヒト結腸腺癌由来細胞に加えて子宮頸がん由来細胞のスフェロイドを構築し,剛性の異なるアガロースゲルに包埋して子宮頸がんにおいても閉じ込め腫瘍モデルを作製した.さらに癌細胞スフェロイドの増殖・浸潤性を三次元的に観察可能な光シート顕微鏡観察系を構築した.その結果,子宮頸がん由来細胞においても周囲ゲルの剛性が一定程度高い数値を示す時に高い増殖・浸潤性を示すことが明らかとなった.さらにヒト結腸腺癌由来細胞と子宮頸がん由来細胞では高い浸潤性を示す力学的環境が異なることがわかった.スフェロイド周囲の力学的環境の計測手法としては,数値解析モデルを用いて圧縮応力を推定する方法論を構築し,浸潤を開始する際の圧縮応力を同定することに成功した. また,力学的環境の変動が癌細胞の浸潤に与える影響を明らかにするために,研究計画に先行して周期的圧縮変形を印加可能な培養装置を開発し,最大1Hz程度までの周期的な力学的刺激を閉じ込め腫瘍モデルに印加できるようにした.装置の動作検証を実施したところ,細胞の生存性を維持した状態で力学的環境を変動させることが可能であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞の上皮-間葉形質転換を評価するための細胞骨格形成の評価およびRT-qPCRの実施は未達成であったが,一方で,研究計画の後期に予定していた周期的圧縮変形刺激を印加可能な培養装置を開発し,腫瘍モデルの力学的環境を変動する方法論を構築できたため.
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今後の研究の推進方策 |
上皮-間葉形質転換の評価系を構築するとともに力学的環境の変動が腫瘍モデルの浸潤に与える影響を明らかにする.
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