研究課題/領域番号 |
22H03950
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
木村 剛 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (10393216)
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研究分担者 |
野村 渉 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (80463909)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マクロファージ / 生体材料 / 免疫反応 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
免疫調節のキープロセスの一つは炎症と抗炎症の調節であり、その制御が重要となる。近年、炎症・抗炎症調節にマクロファージの性質や動態が強く関連していることが明らかとなり注目されている。本研究課題では、生きたマクロファージの極性評価系を確立し、生体材料特性との相関を解明することを目的としている。これを実現するため、(A)遺伝子改変マクロファージの作製、(B)マクロファージ集合体の作製と分極評価、(C)マクロファージ極性を指標とした生体材料評価の研究項目について研究を計画している。(A)について、炎症性(M1)、抗炎症性(M2)極性マーカー遺伝子を選択し、それら遺伝子の下流に発光タグを挿入した遺伝子改変マクロファージの作製を検討した。マクロファージ(THP-1)のM1マーカー遺伝子(IL-1b)への発光タグの挿入に成功した。M1分極誘導による発光強度の増加が示され、発光強度がM1分極の指標となることが明らかとなった。(B)について、マクロファージの集合体、微粒子にマクロファージを担持させた集合体の作製についてマイクロからメソスケールの異なるスケールでの作製を検討した。旋回培養法にて異なるスケールのマクロファージ集合体を作製することができた。分散状態と凝集状態での分極の違いを検討したところ、凝集状態にて高いM1分極性を示すことが明らかとなった。(C)について、種々の高分子材料に遺伝子改変マクロファージを播種し、M1分極を発光測定により評価した。用いる高分子材料により発光強度および経時的変化に差異が示され、遺伝子改変マクロファージを用いて材料のM1分極性を評価することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、生きたマクロファージの極性評価系を確立し、生体材料特性との相関を解明することを目指している。これを実現するため、(A)遺伝子改変マクロファージの作製、(B)マクロファージ集合体の作製と分極評価、(C)マクロファージ極性を指標とした生体材料評価の研究項目について研究を実施する。当該年度は、(A)THP-1細胞を用いた遺伝子改変マクロファージの作製、(B)マクロファージ集合体の作製条件の探索、(3)各種材料上でのマクロファージM1分極測定を計画した。(A)については、マクロファージへの発光タグの挿入に成功し、M1分極誘導剤の濃度に応じた発光強度の増加を示し、発光タグ挿入マクロファージの発光強度がマクロファージのM1分極の指標となると考えられた。(B)については、集合状態の異なるマクロファージ集合体の作製条件を探索し、集合体サイズを制御できた。集合状態により分極性が異なることが明らかとなった。(C)については、用いる高分子材料によりマクロファージのM1分極性およびその極性持続性が異なることが明らかとなった。このことから、遺伝子改変マクロファージを用いて生体材料の初期免疫反応を評価可能と考えられた。上記の研究の成果について、学会等にて発表し、また、論文を投稿中である。以上より、本年度の目的は概ね達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究の推進方策として、(A)遺伝子改変マクロファージの作製、(B)マクロファージ集合体の作製と分極評価、(C)マクロファージ極性を指標とした生体材料評価の研究項目について研究を引き続き実施する。詳細は以下に記す。 (A)遺伝子改変マクロファージに関して、マクロファージ分極のマーカー遺伝子へ発光タグの挿入を昨年度に引続き行う。マクロファージの種類や分泌物質の影響を考察するため、マクロファージとして、THP-1細胞に加え、J774A.1細胞を用いて遺伝子改変マクロファージを作製する。また、マーカー遺伝子として、M1分極マーカー遺伝子であるIL-1bに加え、TNFaを標的として発光性のHiBiTタグを挿入する。M2分極マーカー遺伝子としてIL-10あるいはTGFbを標的として発光性のHiBiTタグの挿入を検討する。さらに、細胞周期マーカーであるFucci遺伝子の挿入を試みる。 (B)上記(A)で開発した遺伝子改変マクロファージを用い、マクロファージの集合状態と分極性について検討する。集合状態の制御については、前年度に開発した手法を用いて効率的に研究を実施する。 (C)マクロファージ極性を指標とした生体材料評価として、表面自由エネルギー、表面電荷、表面粗さなどの異なる高分子材料を用いて、マクロファージの分極性および極性持続性を検討する。また、高分子材料に加え、金属材料、無機材料のマクロファージの分極性および極性持続性も検討する。
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