研究課題/領域番号 |
22H03952
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 淳一 大阪大学, 大学院歯学研究科, 講師 (50530490)
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研究分担者 |
今里 聡 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (80243244)
ハラ エミリオ・サトシ 岡山大学, 医歯薬学域, 研究准教授 (40779443)
松崎 典弥 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (00419467)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生体材料学 / 組織工学 / 細胞集合体 / オルガノイド / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
令和4年度では、骨髄間葉系幹細胞(骨髄幹細胞)と歯髄幹細胞の脈管形成能をin vitroで評価した。まず、ヒト骨髄幹細胞あるいはヒト歯髄幹細胞をマトリゲル上に播種し、血管内皮細胞増殖因子を含む分化誘導培地で最長14日間培養した。その結果、骨髄幹細胞においては、細胞の数や形態に培養14日後も変化はみられなかったが、歯髄幹細胞は培養3日目においてゲル上で増殖している様子が観察された。さらに培養日数が増加するにつれて、歯髄幹細胞がマトリゲル上で網目状構造を形成することが分かった。マトリゲル上に形成された網目状構造について画像解析による定量評価を行ったところ、分岐の数および網目状構造の長さは、培養7日目以降で歯髄幹細胞が骨髄幹細胞に比べて有意に増加していることが明らかとなった。また、二次元培養環境下のそれぞれの細胞について、Real-time PCR法によって遺伝子発現量を検討したところ、歯髄幹細胞でVEGFAやCXCL1といった血管内皮細胞分化マーカーの発現量が有意に増加していることが分かった。次に、幹細胞マーカーであるNanogのmRNA発現量を評価したところ、歯髄幹細胞は経時的にその発現量を減少させる一方、骨髄幹細胞は培養14日間を通してNanogの発現量に有意な変化はみられなかった。これらの結果から、本研究で用いた分化誘導培地による培養条件下では、歯髄幹細胞が骨髄幹細胞に比べて血管内皮細胞に分化しやすいこと、すなわち歯髄幹細胞の脈管形成能がより高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画に則り、歯髄幹細胞と骨髄幹細胞の脈管形成能を多角的に評価した。前述のように、それぞれの細胞を血管内皮細胞増殖因子を含む分化誘導培地で培養した結果、歯髄幹細胞は血管内皮細胞へ分化するが骨髄幹細胞の未分化状態は維持されること、すなわち歯髄幹細胞のみが脈管形成能を発揮することが示された。 以上のことから本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に得られた結果は、本研究で用いた分化誘導環境下において、歯髄幹細胞と骨髄幹細胞の間で脈管形成能に差が生じることを示している。そこで、歯髄幹細胞と骨髄幹細胞を混合した細胞集合体を作製し、上述した分化誘導培地を用いて培養することで、集合体を構成する骨髄幹細胞の未分化状態を維持しながら、歯髄幹細胞を血管内皮細胞に分化誘導し、血管網を有した細胞集合体を作製できるかを評価する。
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