研究課題
本研究では、一酸化炭素 (CO) のサイトカインストーム/多臓器不全に対するProof of concept (POC; 概念実証) を示すとともに、本症に対する創薬アプローチとしてヘモグロビンの固有特性を利用したM1マクロファージ指向性炎症環境応答型COナノ供与体の開発を試みる。2022年度は、CO のマクロファージ制御によるサイトカインストーム抑制効果を検証し、COのサイトカインストームに対するPOCの取得を行った。具体的には、健常マウスと内因性COの産生が少ないHO-1ノックアウトマウス (C57BL/6 Hmox+/- マウス) にリポポリサッカライド (LPS、60 mg/kg, i.p.) を投与して血中および肺胞洗浄液中のサイトカインプロファイルを評価した。その結果、LPS投与後のサイトカイン産生量は、健常マウスに比べHO-1ノックアウトマウスにおいて有意に増加したことにより、内因性COがサイトカイン産生を制御していると考えられた。そこで、LPS誘発サイトカインストームモデルC57BL/6 Hmox+/- マウスにCOを投与し、同様に血中および肺胞洗浄液中のサイトカインプロファイルを評価したところ、CO投与によりサイトカイン産生量は劇的に抑制された。また、マウスマクロファージ (RAW264.7細胞) を用いたin vitroの検討において、COはマクロファージ上に発現するタンパク質Xを介したTLR4の活性化を抑制することで、炎症性サイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。以上の結果より、COは肺のマクロファージ活性を抑制することでサイトカインストームの発症と進展を抑制すると考えられ、COのサイトカインストームに対するPOCを得た。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、COのサイトカインストームに対する概念実証 (POC) を得られており、研究は順調に進展している。
2023年度は予定通り、M1マクロファージ指向性炎症環境応答型COナノ供与体の作製と物性評価を行う。その後、2024-2025年度に重症感染症 (重症敗血症モデル、重症インフルエンザウイルス感染モデル) によって引き起こされるサイトカインストーム/多臓器不全に対するM1マクロファージ指向性炎症環境応答型COナノ供与体の有効性の検証を行う。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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