研究課題
本研究では、一酸化炭素 (CO) のサイトカインストーム/多臓器不全に対するProof of concept (POC; 概念実証) を示すとともに、本症に対する創薬アプローチとしてヘモグロビンの固有特性を利用したM1マクロファージ指向性炎症環境応答型COナノ供与体の開発を試みる。2023年度は、CO のマクロファージ制御によるサイトカインストーム抑制効果の機序を検討した。具体的には、マウスマクロファージ (RAW264.7細胞) にリポポリサッカライド (LPS)を添加させることで活性化させ、COがマクロファージの活性化に与える影響を検討した。その結果、COはマクロファージ上に発現するヘムタンパク質Xの活性化を抑制するとともに、タンパク質Xを介したTLR4の活性化(炎症性サイトカインの産生)を抑制した。また、LPS誘発急性肺障害モデルマウスの肺胞洗浄液を用い、COの肺中のヘムタンパク質Xや好中球のミエロペルオキシダーゼの活性化に与える影響を検討したところ、COはこれらを顕著に抑制した。さらに、ヘムタンパク質Xの阻害剤をLPS誘発急性肺障害モデルマウスに経肺投与したところ、肺障害の重症度は軽減し、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカイン・ケモカインの産生は減少した。この効果は、COと阻害剤を併用した際においても同程度の項かであった。以上の結果より、COはヘムタンパク質を介してマクロファージや好中球の活性化を抑制することでサイトカインストームの発症と進展を抑制していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
予定通りCOのサイトカインストームに対する有効性のエビデンスを得ており、研究は順調に進んでいる。
2024年度は予定通り、M1マクロファージ指向性炎症環境応答型COナノ供与体の作製と物性評価を行う。その後、LPS誘発急性肺障害モデルマウスや重症敗血症モデルマウスによって引き起こされるサイトカインストーム/多臓器不全に対するM1マクロファージ指向性炎症環境応答型COナノ供与体の有効性の検証を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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