研究課題/領域番号 |
22H03960
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
勝見 英正 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (30434666)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 薬学 / ドラッグデリバリーシステム / ターゲティング / 腎臓 / 中分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、セリン修飾による腎臓標的型ドラッグデリバリーシステム(DDS) に基づき、新しい創薬モダリティとして注目される中分子医薬品を搭載した腎臓標的型薬物キャリアを開発することで、中分子医薬品の腎臓標的化による腎臓疾患治療法の構築を目指す。 初年度(2022年度)では中分子ペプチドを担持したセリン修飾高分子(中分子ペプチド-腎臓標的型薬物キャリア)を合成し、中分子ペプチドを担持したセリン修飾高分子が腎臓へ選択的に移行することを確認した。本年度(2023年度)では、体内動態をより詳細に検討するため、中分子ペプチドについて、セリン修飾高分子を利用した際の体内動態制御、腎臓移行性を評価した。すなわち、放射性標識中分子ペプチドを担持したセリン修飾高分子を合成し、マウス静脈内投与後の体内動態を検討した。その結果、セリン修飾高分子に担持した中分子ペプチドは中分子ペプチド単体に比べて急速かつ選択的に腎臓へ移行することが示された。また、中分子ペプチドの腎臓内分布を評価することを目的として、蛍光標識した中分子ペプチドを担持させたセリン修飾高分子を合成し、静脈内投与後の腎臓切片を顕微鏡で観察したところ、近位尿細管に強い蛍光が認められ、セリン修飾高分子に担持している中分子ペプチドが腎臓の近位尿細管へ選択的に移行していることが示された。さらに、近位尿細管上皮細胞への取り込み実験の結果、セリン修飾高分子に担持した中分子ペプチドは中分子ペプチド単体に比べて効率よく細胞内へ取り込まれたことから、セリン修飾高分子に担持している中分子ペプチドは静脈内投与後、選択的に近位尿細管上皮細胞へ移行し細胞内へ内在化されることが示された。一方、別の中分子医薬品として核酸医薬品を搭載したセリン修飾高分子を合成し、電気泳動等により核酸医薬品がセリン修飾高分子へ担持されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、薬物ナノキャリアに搭載した中分子医薬品の体内動態の詳細を明らかにすることが目標であった。これまでにセリン修飾高分子を用いることで中分子ペプチドの腎臓標的化が可能であることが示されており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
近位尿細管上皮細胞及びマウスを用いてセリン修飾高分子-中分子医薬品の細胞内動態を明らかにするとともに中分子医薬品を搭載したセリン修飾高分子の腎臓移行に及ぼす投与量依存性、繰り返し投与の影響について評価し投与方法の最適化を行う。また、セリン修飾高分子-中分子医薬品の薬理効果、安全性などについて検討する。以上の検討を通じて体内動態、薬理効果、安全性に優れる中分子医薬品の腎臓標的型DDSを開発する。
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