研究課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によってサイトカインストームという言葉が様々なメディア等で取り沙汰されるようになったが、サイトカインストームはCOVID-19のみならずリウマチ性疾患や多発性硬化症など様々な自己免疫疾患にも関連するため、つまり、サイトカインストームをいち早く抑制しARDSの症状を抑えることができればCOVID-19 の重症化リスクを大幅に改善することが期待できる。こうした背景のもと、殺傷された死細胞(アポトーシス細胞)の断片が免疫調節機能(抗炎症作用)を有する点に注目し、サイトカインストームの抑制に利用できないかと考えた。本研究では、合目的に設計されたアポトーシス模倣膜高分子を用いて免疫細胞との相互作用を詳細に検討することで、サイトカインストームの発症機構への死細胞の役割を学術的に理解することでARDSの新たな治療法の創製を目的とする。本年度は、アポトーシス模倣高分子(2-Methacryloyloxyethyl phosphorylserineポリマー ; 以下、MPSポリマー)の設計を行う。その際、ポリマーの分子量、形態(粒子、ミセル、疎水度など)の最適化を行った。特にMPSポリマーの構造(グリセロール基)の違いによって、マクロファージの認識が変わることを明らかにした。さらに、MPSポリマーを粒子化することで、より効率的にマクロファージに取り込まれることが明らかとなった。これらのMPSシリーズを用いて、肺胞マクロファージの炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)の産生抑制効果および抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-βなど)の産生促進効果が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、アポトーシス模倣高分子(2-Methacryloyloxyethyl phosphorylserineポリマー ; 以下、MPSポリマー)の合成およびポリマーの分子量、形態(粒子、ミセル、疎水度など)の制御を行った。特にMPSポリマーの構造(グリセロール基)の違いによるマクロファージの認識の違いを明らかにすることができた。さらに、MPSポリマーを粒子化することで、より効率的にマクロファージに取り込まれることを明らかとした。また、これらのMPSシリーズを用いて、肺胞マクロファージの炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)の産生抑制効果および抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-βなど)の産生促進効果を検証することができた。
今後は、MPSポリマーのIL-6アンプ制御における役割を詳細に検討するためには、効率的な細胞取り込み、相互作用、投与方法や最適な滞留時間などを制御する必要がある。同時に、Signal Transducer and Activator of Transcription 3(STAT3)経路の活性化に及ぼす影響を調べる。さらに、非免疫細胞である気管支・肺胞上皮細胞、血管内皮細胞などを用いた炎症・抗炎症効果を評価する。さらに、DNAアレイ法を用いることで、MPSポリマーがIL-6アンプの活性化においてどの遺伝子機能を阻害・促進しているかを網羅的に解析する。さらに、新たな材料設計として、炎症部位の低pH環境のみでPS基が露出する分子設計を行う。また、抗体とMPSポリマーとの複合体Antibody-Polymer Conjugates (APCs)の作製を行い、抗炎症効果を検証する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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