研究課題/領域番号 |
22H03969
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
森本 展行 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (00313263)
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研究分担者 |
城 潤一郎 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (60511243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スルホベタインポリマー / がん組織 / 局所冷却 |
研究実績の概要 |
スルホベタイン(SB)モノマーを側鎖(スルホネートあるいはサルフェート)、主鎖(メタクリレートあるいはメタクリルアミド)、荷電基間のアルキル鎖長と側鎖の有無に着目して合成し、水系溶媒を用いた可逆的付加連鎖移動(RAFT)重合から分子量1万前後のポリマーを調製し、重合末端へ蛍光分子を修飾した。得られた各種のSBポリマーをヒト肝がん由来HepG2細胞を用いた三次元細胞凝集塊から評価した。その結果、メタクリレートよりもメタクリルアミドが、さらに側鎖のツビッターイオン間に水酸基をもち水溶性に優れたモノマーよりなるポリマーの浸透性が高いことが明らかとなってきた。このポリマーでは300マイクロメートルほどの三次元細胞凝集塊に対し、3分かからずに最深部にまで到達することが可能であった。この浸透性の高さはヒト不死化骨髄由来の間葉系幹細胞を用いた場合も同様の傾向が得られた。一方で予定していたB16F10細胞では、現時点で安定した凝集塊が得られておらず、今後の課題となる。次にフルオレセインを修飾したSBポリマーの低温での三次元細胞凝集塊への移行特性を検討した。単層培養の場合と同様、37℃での移行に比べ低温の方が移行量が多いこと、血清条件よりも無血清培地やバッファー溶液においてポリマー移行量の増大が確認されるとともに、1時間の処理によりアポトーシスを誘導しえることが確認できたが、処理法の最適化や抗がん剤コンジュゲート時の効果については今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10月に島根大学への異動があり、研究環境の整備に時間を要したものの、概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.親水性SBポリマーの低刺激法の開発: 前年度に目処を立てた親水性SBポリマーを選択し、刺激温度・時間・刺激回数など低温刺激方法の最適化を三次元細胞凝集塊の殺細胞活性から検討する。 2.局所冷却システムの構築: 神経ブロック用絶縁電極注射針を用い冷却したシリンジ針を通じてSBポリマー溶液を局所注射し、がん組織・ポリマーの冷却とポリマーの浸透促進を試みる。シリンジ針の冷却は、直流電源からペルチェ素子により冷却した冷却ヒートシンクに接続して行う。がん組織の冷却効果は、鶏モモ肉へPt100温度センサを直接刺して温度計測し、注射針からの距離と温度との関係を算出、直流電圧の調節から温度制御を行う。 3.抗がん剤修飾SBポリマーの合成と低温殺細胞活性評価: 抗がん剤としてドキソルビシン、17-AAG、テモゾロミドを選択し、SBポリマーへのコンジュゲートを試みる。得られたポリマーの評価を、HepG2細胞や調製条件を検討したB16F10細胞の三次元細胞凝集塊に対する殺細胞活性から評価する。また細胞死・アポトーシスの誘導について経時的に解析を行っていく。
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