研究課題
尿路上皮癌は尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)に発生する癌であり、最も発生頻度の高いのは膀胱癌である。泌尿器科系悪性腫瘍の中では前立腺癌に次いで多く、組織型は移行上皮癌が約95%で、しばしば多発し、再発を繰り返すのが特徴である。尿路上皮癌は尿路全ての検査が必要であり、尿細胞診ならびに膀胱鏡検査の併用が診断のゴールデンスタンダードとなっている。しかしながらスクリーニング診断としての役割を担う尿細胞診は異型度の低い、いわゆるlow-grade癌に対する感度が低く、新しいスクリーニング法の開発が必要である。そこで本研究では尿中活性型PKCαをバイオマーカーとする新しいバイオセンシングシステムを開発している。昨年度までに作製した抗体の特異性を活かして、本年度は基板表面への酵素固定化法やマスキング法、さらに様々な検出原理を比較し、それらの最適化を図った。さらに早期の臨床応用をめざして新たに96wellプレートを用いた通常のELISAキットの開発にも着手した。一般的に抗原抗体反応を高感度検出するには抗原に対する抗体の特異性が最も重要であるが、その性能を十分に発揮させるためには固体表面への抗体修飾法の最適化も必要な要件となる。当該年度は抗体の配向制御や固定化量の観点からいくつかの修飾法を検討し、もっとも効率的な修飾法を決定し、さらに固体表面と抗体をつなぐリンカー長も最適化した。また抗原による抗原の捕捉・検出には直接法、間接法そしてサンドイッチ法が一般的であるが、開発するセンサーでは直接法と間接法を比較検討し、感度、検出精度、操作性・安定性の観点から前者を選択した。同様の検討をELISAキットについても実施し、PKCα標品を用いた性能評価を実施した結果、いずれのセンシングシステムも十分な実用性を有すると判断した。今後は検出系に最適化した前処理法を検討した上で、臨床検体での評価を実施する。
2: おおむね順調に進展している
尿中活性型PKCαをバイオマーカーとする新しいバイオセンシングシステムの有用性は臨床検体を用いた初期評価においても確認できた。その一方で、センサメーカーからの供給体制に不安が生じており、早期の臨床応用の観点からも新たに96wellプレートを用いた通常のELISAキットの開発にも着手した。こちらも順調に進んでおり、来年度までに前処理法を確立し、最終目標は達成する見込みである。
尿中活性型PKCαをバイオマーカーとする新しいバイオセンシングシステムの有用性は臨床検体を用いた初期評価においても確認できたが、センサメーカーからの供給体制に不安が生じており、早期の臨床応用の観点からも新たに96wellプレートを用いた通常のELISAキットの開発も進める。
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