研究課題/領域番号 |
22H03979
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大山 勝徳 日本大学, 工学部, 准教授 (50615606)
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研究分担者 |
酒谷 薫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (90244350) [辞退]
山田 亨 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (10344144)
谷川 ゆかり 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究部門付 (20344202)
川口 拓之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60510394)
守屋 正道 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 老化脳神経科学研究チーム, 研究員 (80848135)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時間分解分光法 / TNIRS / 脳萎縮度 / 脳溝 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、時間分解分光法(TRS-NIRS)を用いた軽度認知機能障害(MCI)のスクリーニング手法の確立である。脳萎縮に伴う脳脊髄液層(CSF層)の厚さや脳溝の広がりが近赤外光の平均光路長に影響を与えることが分かっているが、その具体的な影響は不明である。本研究では、光伝播シミュレーションやファントム実験を用いて脳萎縮と平均光路長の関係を明らかにし、教師付き学習モデルを用いてMCIを予測可能な手法を開発することを目指す。この手法は、低コストで入手可能な計測データを用いて、高い精度で軽度認知症のスクリーニングを実現することが期待される。研究の一環として、新たなTRS-NIRS計測を行い、MRI計測結果から算出される脳萎縮度と比較する横断的研究を実施している。 今年度は,脳萎縮と平均光路長の直接的関係を解明するための準備として,既存のMRI画像データからMCI患者の脳溝に関する統計情報を調査した。先行研究にて平均光路長の大きさは脳溝の深さや幅が影響することを報告されていたためである。脳溝が関わる統計情報を得るためにFreeSurfer解析ツールを用いて,TRS-NIRS計測に最も関連する部位(前頭極)の脳溝付近の統計情報を正確に得ることができている。 今後,TRS-NIRS計測結果と紐づいているMRI計測結果を解析可能とすべく,倫理審査の審査を終えて,実際に10例から20例について解析を進める。実際のTRS-NIRSの結果と紐づいた被験者のMRI計測結果からCSF層の厚さや脳溝の幅を求め,その統計結果に基づいてファントム実験や脳機能シミュレーションを実施する。その結果から脳萎縮度を推定するための特徴量を見出す。それと同時に,脳萎縮度を目的変数として酸素飽和度や平均光路長等を説明変数としたときの回帰分析や検定を行い,脳萎縮度の推定可能性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TRS-NIRS計測結果と紐づいているMRI計測結果を解析するために,倫理審査の審査を経ている必要はあるが,研究代表者の機関は医学ではなく工学系であるため,倫理審査を経た後に異なる機関で代理審査を行う必要がある。審査手続きと機関を併せて半年以上を要するため,その間は別の課題を進める必要が生じている。 一方で機械学習モデルに関して,TRS-NIRS計測結果とは異なるが,血液検査結果を入力としたときの新しい特徴量の発見や予測結果のロバスト性を向上させる方法を見出し,いくつかの改善を進めることができた。TRS-NIRS計測結果から新特徴量を抽出するアルゴリズムを提案することができた時点で1つの成果として論文化できる見通しをつけている段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度ではTRS-NIRS計測結果と紐づいているMRI計測結果を解析可能とすべく,実際に10例から20例の結果を得て1例ずつ丁寧に解析を進める。その過程で,TRS-NIRSの結果と紐づいた被験者のMRI計測結果からCSF層の厚さや脳溝の幅を求め,その統計結果に基づいてファントム実験や脳機能シミュレーションを実施し,その結果から脳萎縮度を推定するための特徴量を見出す。それと同時に,脳萎縮度を目的変数として酸素飽和度や平均光路長等を説明変数としたときの回帰分析や検定を行い,脳萎縮度の推定可能性を検証する。 研究を遂行する上での問題点は1つある。CSF層の厚さや脳溝の幅が主にTRS-NIRS計測結果の平均光路長に影響を与えることを仮定している。ただし,その原因を解明していないため,単純化された脳構造の情報のみでは特定できない可能性がある。そのため,統計情報のみではなく,平均光路長をグループ化したときのMRI画像を1枚ずつ追跡して解析する必要性があると考えられる。
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