研究課題/領域番号 |
23H00612
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
篠崎 実 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (40170881)
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研究分担者 |
土井 雅之 文教大学, 文学部, 准教授 (00614992)
中野 春夫 学習院大学, 文学部, 教授 (30198163)
丹羽 佐紀 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (40244272)
桑山 智成 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40388062)
岩田 美喜 立教大学, 文学部, 教授 (50361051)
末廣 幹 専修大学, 文学部, 教授 (70264570)
松岡 浩史 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80780048)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | エリザベス朝演劇 / 大衆劇場 / 劇の創作 / 改訂 / 複数テクスト劇 / 契約 |
研究実績の概要 |
各研究担当者が割り当てられた分野を担当し、それぞれの分野に関して、エリザベス朝演劇における劇作家たちの劇団での仕事ぶりに関する資料収集、関連作品収集と読解の作業に着手した。 海外での資料調査・収集に関しては、研究代表者がR5年8月に当該科研費によって、連合王国のオックスフォード大学ボドレイ図書館で資料調査を行なった。国内の資料調査は研究代表者と分担者1名がR5年12月にシェイクスピア・コレクションを所蔵する秋田大学にて行なった。 R5年9月1日に福岡(JR博多シティ)において第1回研究会を九州シェイクスピア研究会との合同研究会として開催し、研究の計画と方向性を確認したうえで、2点の研究発表と招待講演を行なった。令和6年3月21日にも九州シェイクスピア研究会と合同開催で第2回研究会を開き、招待講演と研究発表を行なった。 R5年10月の第61回シェイクスピア学会では、研究分担者2名がセミナーのコーディネーター、およびコメンテーターをつとめた。そのほかに、研究分担者はR5年7月のジョンソン協会におけるシンポジウムの発話、R6年3月のブロンテ協会関西支部会における招待講演を行なった。学会誌等への研究成果の発表状況は、フランスのCahiers Elizabethans誌ほか、 所属大学の紀要などにあわせて5本の論文が発表された。また、共訳書1点があった。 数字で挙げると、論文5点、訳書1点、書評1点、学会発表5本、研究会発表2点、出張20回、資料調査4回となる。ここで言及したのはすべてエリザベス朝演劇関連の研究実績である、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、第1部門「劇団経営と興行システム」、第2部門「芝居小屋と地方巡業」、第3部門「オファーと台本作成」、第4部門「ペストと上演規制」という4つの部門を設け、エリザベス朝演劇において台本の作成依頼、執筆、稽古、上演、出版が行われるまでの共同作業的工程の全貌を8名によって分析、検証するものである。各部門に2名のメンバーを配置し、メンバーは部門ごとに設定された課題を担当する。研究期間全体をとおして各部門に共通する作業は、課題に関連する。第1部門を中野春夫、丹羽佐紀が、第2部門を岩田、桒山が、第3部門を松岡、篠崎が、第4部門を末廣、土井が担当し、劇作家の劇団における創作活動を時間軸のなかで定式化するために、劇団の資料と作品の検証を行なう研究期間初年の昨年度は、そのうち、外的な要因に関する資料の収集を主に行なった。 さらに各研究者それぞれ集めた資料をもとに、部門ごとの課題に関する分析、考察も進め、第1回の研究会では、篠崎が、劇作家ベン・ジョンソンの、劇団への台本提供と自身のための全集作成という特異な仕事ぶりについて成果を披露し、第3部門の研究課題に関する考察の進展ぶりを示した。また、第2回研究会では、中野が、株式を所有し劇団の経営者でもあったシェイクスピアの特異性についての考察の一端を披露し、第1部門の研究課題に関連する考察の進展ぶりを示した。 このように、研究期間初年の研究計画は予定どおりに進捗しており、次の段階へのステップも踏みだされている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、エリザベス朝演劇の主流の研究方法が抱える、上演に関わる社会・歴史的研究と劇作品の無時間的解釈の乖離という問題点を克服するために、演劇の制作を劇作家と劇団による集団的な創作の過程ととらえ、劇作品を時間のなかで展開していくものと考え、複数テクスト劇の本文比較による創作過程の再現と分析を行って、劇作家が劇団とともに行う創作のさまざまな段階を再現したり、劇団経営の事情や上演の物理的制約によって劇に生じた変化を読み解くなどといったことを行って、劇作家個人の才能の発露と考えられてきた劇作品を、集団的創作の産物とみなし、エリザベス朝イングランド大衆劇場における創作活動と興行の実態に迫ることである。 初年度のR5年度には、各担当者が資料の収集に行ない、口頭発表、研究論文で、劇団の興行における具体的な劇作品の創造のあり方に着手した。 2年以降は、資料収集を進めながら、劇団の興行研究という観点からの作品解釈、作品の創作過程の分析による興行研究に本格的に踏みだす必要がある。そのため、資料調査をつづけながら、年2回の研究会を開催し、各メンバーが学会発表、学会誌等での研究成果の披露を行なうという具体的な方法は変わらず、研究計画書で謳ったように最終年度に当たるR7年度には、研究成果をまとめて、翌年研究成果公開促進費によって論集の刊行を目指して研究を進めていく。
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