研究課題/領域番号 |
23H00644
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大野 直子 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (90730367)
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研究分担者 |
南谷 かおり 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい准教授 (00571423)
木内 貴弘 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (10260481)
吉富 志津代 武庫川女子大学, 心理・社会福祉学部, 教授 (20608559)
川内 規会 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (30315535)
五十嵐 ゆかり 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (30363849)
服部 しのぶ 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (40321012)
石川 ひろの 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40384846)
濱井 妙子 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (50295565)
押味 貴之 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (60526177)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 医療通訳 / 多文化社会 / ヘルスコミュニケーション / コミュニケーション / プログラム開発 / 研修開発 |
研究実績の概要 |
外国人診療において,安心して受診するために適切なコミュニケーション能力を有したプロの医療通訳者の普及拡大が望まれる。しかし,公式に公開されている医療通訳テキストには,コミュニケーションスキルの具体的な訓練がほとんどない。一方,医療者向けに様々なコミュニケーションスキル研修があるが,通訳分野には認知されていない。また,医療者対象の医療通訳者との協働に向けた資料は国内に見当たらない。そこで,本研究は,多言語共生社会の一員として活躍できる医療通訳者の質保証を目的として,医療通訳者と医療者向けのコミュニケーション技術研修・資料を新たに開発し,その実施と評価を行った。「チーム医療のなかでの医療通訳者のコミュニケーションスキル」として推奨される国の施策に対し,本研究により基礎研究データが整備された。また,本研究の成果は,今後の外国語教育の発展に貢献するなど社会的にも有意義である。1年目は,医療者・医療通訳者のコミュニケーションへの意向と関連要因を調査・検討するため,文献調査および半構造化面接ならびに質問紙調査を実施した。本研究の目的は,医療現場における医療通訳者に向けたコミュニケーション教育を開発・検証し,その知見を活かして,多文化共生社会におけるコミュニケーション教育の推進と外国語教育への応用を図るものであった。本研究では,1)医療通訳者のコミュニケーションスキルに関する分析を行い,2)既存の医療者向けコミュニケーションスキル研修に着目して医療通訳者用の研修を開発した我が国初の試みである。また,3)研究成果を速やかに社会還元することで,医療通訳者の質保証に寄与する。それにより,日本語で話す医療者と外国語で話す患者の双方の安心と信頼を向上させ,医療通訳教育体制を強化・発展させるなど社会的にも有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は,医療者・医療通訳者のコミュニケーションへの意向と関連要因を調査・検討するため,文献調査および半構造化面接ならびに質問紙調査を実施した。半構造化面接:全国医療通訳者協会所属の医療通訳者数名と,医療者数名を対象にインタビュー調査を行う。現場で必要とされる医療通訳者のコミュニケーションや,スキルが不足した場合に生じるトラブルの事例などについて半構造化面接を行い,その結果に対してSCAT分析を用いた内容分析の手法を用いて分析した。データ収集:医療通訳者・医療者または医療系学生を対象としたオンライン質問紙を作成,約40名に回答してもらった。対象機関は,医療通訳を養成する大学,外国人診療を行う医療機関とした。調査項目には,コミュニケーションスキル尺度ENDCOREs(他者受容や対人関係調整に関する項目を含む)や医療面接における医師・患者間コミュニケーションスキル評価尺度,看護師における患者とのコミュニケーションスキル測定尺度など,既存の尺度を使用した。得た回答を統計解析し,医療通訳者のコミュニケーションスキルに必要とされる能力を抽出している。国内文献:外国語学習,医療者-患者間のコミュニケーションスキルなどを対象にした資料収集を行う中で,医療通訳者に必要なコミュニケーションスキルを検討した。1年目の研究により,医療者側と医療通訳者側が考える,医療通訳者に求められるコミュニケーションの要素と関連要因が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は,1年目で得た結果を基に,医療通訳者対象のコミュニケーションスキル技術研修プログラムを開発し,少人数でパイロット調査を実施する。本研究は,医療の国際化が進むわが国において,外国人患者に配慮した医療コミュニケーションスキルを有した医療通訳者の育成推進を目指すものである。その核心をなす学術的「問い」は『多文化共生社会の一員として適切なコミュニケーションを行う医療通訳者をどう育成するのか,また医療者に医療通訳者との協働をどのように認識してもらうか』である。現在,様々な機関で医療通訳者の育成がなされている。「医療通訳育成カリキュラム基準」では,医療コミュニケーションに関連する講義の推奨時間は6時間とされている。そのため,同基準を意識して,その中に組み込み可能な6時間の研修を作成し,研修に盛り込む。以上により「問い」の解明を目指す。
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