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2023 年度 実績報告書

セル画の保存のための環境条件の最適化に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 23H00710
配分区分補助金
研究機関東京藝術大学

研究代表者

塚田 全彦  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (60265204)

研究分担者 岡本 美津子  東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (50516838)
田中 眞奈子  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (70616375)
貴田 啓子  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (20634918)
小椋 聡子  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (80832542)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワードセル画 / セルアニメーション / 絵具 / 合成樹脂 / 保存科学
研究実績の概要

日本国内ではこれまでに多数のセル・アニメーションが制作され、その過程で中間制作物として制作されたセル画は膨大な数に上る。近年アニメーションの文化的価値が国内外で認知されるようになったのに伴い、セル画を含む中間制作物の保存の重要性が認識され、そのための活動が活発化している。しかし一方で、合成樹脂を含む複合材料で制作されたセル画の保存に必要な各構成材料の劣化の機序と、各材料が劣化した際の他の材料への相互影響については十分に検証されているとは言い難い。そこで本研究ではセル画の保存に関する現況を調査するとともに、各材料に対して周辺環境がおよぼす影響と材料間の相互影響を科学的に評価し、セル画全体の挙動を総合的にとらえ、セル画を長期保存するのに最適な環境の条件の解明を目指す。これを基にセル画を保存収蔵する際の環境に関する指針と既存の収蔵施設の環境改善方法の提案を試みる。
本研究は5年間の研究期間で、初年度の今年度は以下の項目を実施した。
①セル画とその制作材料の劣化・損傷・保存状態に関する知見の収集・整理
海外で行われた先行研究と、国内で報告があるセル画の劣化現象には若干の相違がある。これは日本で制作されたセル画の材料や保存環境によるものなのかを探求するために、国内でセル画を保存する機関等での調査により、情報の収集・整理を行う。今年度は具体的な実見調査には至らなかったが、関係者と情報交換する機会を複数回得ることができた。
②セル画用透明フィルムおよび絵具の促進劣化実験の準備
セル画用フィルム・絵具の温湿度条件による物理的・化学的な性状の変化を科学的な実験を通して評価する。今年度は評価項目として重要な、酢酸を主とした放散される化学物質の分析に用いるガスクログラフ質量分析計(GCMS)を新規に導入し、安定して継続的に実験を行うための基盤を整えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上述のように今年度は主に①セル画とその制作材料の劣化・損傷・保存状態に関する知見の収集・整理と、②セル画用透明フィルムおよび絵具の促進劣化実験を行うための準備として新規装置の導入を行った。
①については収蔵施設等での保管状況等を実見するにはまだ至っていない。本研究の成果を実際の保存に活かすためにも、現況を知ることは非常に重要である。情報収集を行う上では、本研究を知った関係者から連絡を受けることもあり、関心の高さを感じており、できるだけ早期に実現したい。
②についてはセル画用透明フィルムと同素材に関する先行研究があり、セル画用透明フィルムの特殊性の有無を確認する上でも重要な追試となる予備実験を早急に行いたいが、装置の新規導入と稼働開始までに時間を要したため、評価手法の細かな調整を行っている段階である。そのため、全体的にはやや遅れていると言わざるを得ない。

今後の研究の推進方策

今後も①セル画とその制作材料の劣化・損傷・保存状態に関する知見の収集・整理と、②セル画用透明フィルムおよび絵具の促進劣化実験、の2つの項目について、研究を粛々と進める。
①については先述のように関係者の関心は高いと思われ、これまでに知己を得た関係者を通して現況の実見につなげられるよう、可能性を探る。可能であれば環境の長期モニタリングの実施につなげたい。
②についてはまず予備実験を行い、セル画用透明フィルムの性状変化の評価追試を早急に行う。またセル画用絵具について、さらには両者が共存する場合の相互作用について、実験を展開していく。

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公開日: 2024-12-25  

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