| 研究課題/領域番号 |
23H00857
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| 配分区分 | 補助金 |
| 研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三井 泉 神戸大学, 経営学研究科, 客員教授 (00190679)
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| 研究分担者 |
河口 充勇 帝塚山大学, 文学部, 教授 (00469074)
藤本 昌代 同志社大学, 社会学部, 教授 (60351277)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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| キーワード | 事業継承 / 東アジア企業 / 価値創造 / ネットワーク / 経営人類学 |
| 研究実績の概要 |
この研究は、東アジアにおける事業継承の問題に対し、学際的・質的研究により分析することを目的としている。2023年度は、主力研究メンバーや海外協力者の公務上の事情により、現地の調査研究がほぼ不可能であった。今年度は状況が改善されたため、前年度に不可能であった以下のような調査を行った。 (1)台湾・台北市調査(7月7日~9日、三井、藤本、住原、郭)。①台北市駅構内開催の全国老舗企業イベント見学と出店企業ならびに企画母体へのインタビュー。②中国文化大学訪問。沈美雪教授(日本文化論)との研究打ち合わせ。③老舗企業「郭元益」(本店、企業資料館)見学とインタビュー。④南門市場見学、店舗・共同組合へのインタビュー。以上から次の点が明らかとなった。第一に、老舗企業の継承問題解決のための自治体や地域による対応策。第二に、旧来型市場から新たな市場への転換と参加店舗における家族経営・継承の変化。第三に、老舗企業の、海外市場競争へ向けた戦略転換と、それによる後継者の役割変化などである。これらについては、継続調査が必要である。 (2)北海道の事業継承調査(8月26日~28日、三井、岩井、出口、上林、竹内)対象は札幌市と岩見沢市。札幌市では、風月株式会社代表取締役の二神ひかり氏と株式会社セコマ代表取締役赤尾洋昭氏にインタビューを行い、主要店舗を見学。両社とも北海道の地域特性を生かした事業展開を行い、地域リーダーとしても重要な役割を果たしている。岩見沢市の株式会社宝水ワイナリーでは、倉内武美代表取締役にインタビューを行い、創業の際の農地開拓、ワイン醸造やその販売に関する工夫、さらに次世代の事業後継者育成について、貴重な話を聴取した。これらの調査から事業継承にとっては、地域特性や事業の特徴、さらに世代をつなぐネットワークも継承には重要な役割を果たすことが理解された。これらは今後の研究の課題である。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究は、2023年度には、研究メンバーおよび海外の研究協力者の事情ならびに、対象地における自然災害などの理由により、ほとんど調査ができなかった。その間については、研究代表者と研究分担者が中心となり、文研収集やメンバー間の研究打ち合わせや情報交換を行い、資料の蓄積を主として行ってきた。このことから、基本文献や資料の蓄積は各研究機関で進められており、メンバー間でもクラウドなどで共有されている。 また、2024年度に入り、状況が改善されることにより、国内外の調査が順調に進むようになり、新たな海外での研究協力者も得ることができ、順調に海外での研究ネットワークが築かれつつある。この結果として、特に、台湾と韓国の調査が順調に進むようになった。当該補助金の関係では、台湾(台北)での調査をきっかけとして、大学(中国文化大学)や台北の老舗企業ならびに台湾各地に点在する市場での事業継承研究を勧められる基盤が出来上がってきた。また北海道においても、事業継承者や研究機関等の連携の基盤が築かれつつある。今後は、他の地域にも研究を進めて、日本の地域間における事業継承の比較研究への進展が期待される。 さらに、この研究の方法論的母体である「経営人類学」も、国内外で注目を浴びる存在となっており、この研究メンバーもほとんどがその研究を共有していることから、今後は、それぞれの研究の相互作用により、本研究もさらなる国内外への発信が期待できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
今までに蓄積してきた研究資料、調査結果、人的ネットワークを基盤として、さらに研究計画に従って進めていきたい。特に2025年度は、研究3年目(期間5年)の中盤に差し掛かるため、現地調査の進展もさることながら、収集した結果をある程度まとめて、論文、研究ノートや口頭発表の形で、国内外へ向けて発信していきたいと考えている。すでに現在予定されているのは、2025年6月14日~15日に東京(中央大学)で開催される国際会議GBAS(Global Business Anthropology Summit)における共同報告(三井、藤本、住原、岩井、山内、奥野、出口、竹内、郭、池田)である。ここでは、三井が全体のフレームワークを示した後で、全員が今までの調査結果をケーススタディの形で報告をする予定である。この会議は実務界の方々を含め、世界中から参加者が集まるので、我々の研究を世界発信できるよい機会であると考えている。 また、今後は日本、韓国、台湾、中国の事業継承の比較のフレームワークをさらに精緻にしていくことが必要となる。すでに暫定的な枠組みは三井が作成しているが、それをさらに現実のケースなどとも比較しながら、全員で検討していく予定である。また、今まで関係を深めいるアジアの研究機関(中国文化大学、延世大学など)の連携をさらに強めるため、相互に研究交流をしていきたいと考えている。 研究の深化という点では、今まで蓄積してきた日本の伝統産業(特に酒造業や陶磁器業など)に加えて、近代化以降いろいろな形で進展すると同時に、継承問題も深刻化しているとされる印刷業、製本業、出版業などについても、昨年度からパイロット調査を始めているため、さらに深めていきたいと考えている。また、可能であれば、一次産業にも視点を広げ、農業の事業継承についても調査を広げることを検討している。
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