研究課題/領域番号 |
23H00924
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 正人 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 名誉教授 (20177140)
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研究分担者 |
山本 健也 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 化学物質情報管理研究センター化学物質情報管理部, 部長 (50739133)
川上 泰彦 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70436450)
荒井 英治郎 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (60548006)
植竹 丘 共栄大学, 教育学部, 准教授 (90635244)
櫻井 直輝 放送大学, 教養学部, 准教授 (60785385)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 労働安全衛生法 / 学校の安全衛生管理体制 / 教員のメンタルヘルス / 衛生管理者 / 衛生推進者 / 衛生委員会 |
研究実績の概要 |
2023年度は、本調査研究の初年度であるため、調査研究対象である精神疾患による病気休職者・長期病気休暇取得者(以下、長期療養者)の出現率が高位、下位の自治体(都道府県並びに政令市教育庁)から10数の候補を選定し、調査協力の承諾を得ることから始めなければならなかった。4月~8月の前半は、候補10数自治体に調査の目的、期間中の調査研究と各年度作業の内容、調査研究からの知見・成果の還元方法などについて個別に説明して調査協力をお願いした。その結果、出現率高位自治体からは、都道府県では東京都、奈良県、沖縄県、政令市では横浜市、京都市、広島市、出現率下位自治体からは、都道府県では山梨県、兵庫県、政令市では浜松市、熊本市から調査協力を得られた。 9月以降は、上記10自治体の訪問(インタビュー)調査を実施した。調査の内容は、都道府県教育庁に対しては、「1.当該都道府県における公立小中学校の安全衛生管理体制と取組(県内市町村教育委員会に対する指導、支援、連携・協働などについて)、2.当該都道府県における県立学校の安全衛生管理体制と取組、3.校長等の管理職、産業保健担当者(衛生管理者、衛生推進者)、一般教員に対する安全衛生・メンタルヘルスケアなどに関する研修など」のような質問項目を事前に送付し、調査当日に各教育庁担当部署から質問項目に沿って説明を頂いた後に質疑応答、意見交換を行った。政令市教育庁に対する調査も都道府県教育庁調査と同様の内容で実施した。 1自治体については日程などの調整が年度内でできず調査を2024年度前半に実施する予定となったが、他の自治体全てに対する調査は2023年度内に実施できた。各自治体における学校の安全衛生管理体制の整備状況と取組みの実情を凡そ把握することができ、次年度以降の調査研究(学校アンケート調査)を進めるうえで貴重な資料・基礎データを収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本調査研究において、作業を進める上での一番のハードルは、調査研究対象である自治体(教育委員会)、並びに学校からの協力を得られるかどうかであった。近年、学校の働き方改革の下で業務負担軽減などが取組まれており、教育委員会並びに学校は、業務負担軽減の一環として外部からの調査依頼等は極力受けないとする方針を出している。そんな中で、本調査のように教育委員会並びに学校に対して一定の調査対応の負荷をかけ、また、働き方改革の取組みの重要なテーマの一つになっている安全衛生管理体制の整備と実際の取組み内容をどこまで詳細に情報提供をして頂けるかなど危惧もあった。実際に、働き方改革の立場から教育委員会並びに学校の負担増が想定されるため本調査に協力できないとする自治体もあった。ただ、本調査への協力を受け入れて頂いた10自治体においては、学校の安全衛生管理体制の整備とその実効的な運用が当該自治体でも喫緊の重要な課題となっているとの理由から、本調査を当該自治体の取組みに活用したいという意向もあり協力を承諾頂けた。 2024年度は、幾つかの調査協力自治体で追加の教育委員会に対する訪問(インタビュー)調査と学校訪問(インタビュー)調査を実施する予定である。それら訪問(インタビュー)調査を踏まえながら、調査協力自治体において、公立小中学校を対象にした学校アンケート調査を実施することにしている。教育委員会並びに学校に対する調査に付随する負担をできるだけ軽減するような工夫を教育委員会並びに学校と相談しながら、学校アンケート調査を計画通りに実施できればと考えてる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、秋から冬に公立小中学校アンケート調査を実施する。秋までに調査票を作成し、その後の調査票の配信・回収、データ整理等は民間調査会社に委託する。なお、当初、都道府県と政令市ともに、10自治体全部で学校対象アンケート調査を実施する予定であった。政令市は、直接所管の学校のため全政令市教育庁から了解を得られているが、都道府県の場合には、公立小中学校の所管は市町村教委であるため市町村教委の協力・承諾を得られないと公立小中学校アンケート調査を実施できない。都道府県教育庁の中には、小中学校アンケート調査を承諾してくれ、県から県内市町村教委にアンケート調査に協力する旨を依頼、伝達してくれている教育庁がある一方で、そうした依頼、伝達を県内市町村教委にできないとする教育庁もあった。以上から、学校アンケート調査は、都道府県の場合、市町村教委にアンケート調査の協力依頼、伝達をして頂いた県では対象市町村教委の選定を県教育庁と相談しながら市町村で学校アンケート調査を実施する。また、学校アンケート調査は、当初、学校長、衛生管理者又は衛生推進者、教員を対象に実施する予定であったが、教員対象アンケート調査は、働き方改革の下で教員に余計な負担を強いることになるため避けて欲しいとする意向が強かった。ただ、一部の県と政令市の教育庁からは、教員の認識や実態等について貴重なデータを収集できる機会でもあるため教員対象のアンケート調査を実施して構わないとするところもあった。そのため、学校アンケート調査としては、学校長、衛生管理者又は衛生推進者を対象にする調査は全自治体(政令市は全自治体、都道府県では市町村での学校アンケート調査を認めてくれた県に限定)で実施することにし、教員対象のアンケート調査は、それを承諾した自治体で実施することにしたい。
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備考 |
独立行政法人・教員支援機構が制作している校内研修シリーズのNO.132として制作された研修動画で、本科研費の研究分担者である山本健也氏と共同作品である。
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