研究課題/領域番号 |
23H00987
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野邑 健二 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 特任教授 (50345899)
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研究分担者 |
佐野 美沙子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (00710815)
福元 理英 日本福祉大学, 社会福祉学研究科, 准教授 (00805616)
永田 雅子 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 教授 (20467260)
村瀬 忍 (廣嶌忍) 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40262745)
横山 佳奈 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 特任助教 (40910906)
五十嵐 剛 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (50735199)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 発達性読み書き障害 / 学習障害 / 5歳児健診 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、5歳児健診の場を利用した発達性読み書き障害児の早期発見と、発見された要支援児への苦手に合わせた総合的な学習支援カリキュラムによる、就学前の学習障害児支援システムの構築である。 健診の場を利用することで、地域に住むすべての子どもを対象としたスクリーニング体制が可能となるとともに、発見のための負担を軽減することができる。加えて、本人、家族、園それぞれからの情報を得ることも容易となる。また、年中にある5歳児健診を起点とすることにより、年長の1年間を支援期間として利用することが可能となり、十分な準備を経て就学することが期待できる。 本研究の優れた点は、読み書き障害の背景にある多彩な要因に対して、多職種協働の視点を用いて、要支援児の特性に合わせたテーラーメイドな支援が可能な点である。発見のための視点として、①音韻認識②視知覚認知③手先の巧緻性のそれぞれの苦手さに着目して検査ツールおよび問診項目を開発し、就学前の支援においても要支援児の①-③の苦手に合わせた支援カリキュラムを準備・実施する。その後、就学して学習を開始した後に習得度を評価することにより、就学前の支援システムの効果を検証する。 2023年度は、「音韻認識」「視知覚認知」「手先の巧緻性」の3領域それぞれについての5歳児健診における検査項目を開発した。既存の5歳児健診の場を利用して10-15分程度で行えるものとし、併せて保護者に記入を依頼する質問項目も作成した。検査で要フォロー基準となったケースに対して、年長時に個別に精査を行った後に支援プログラムを実施する予定であり、プログラムについても検討した。 2023年度は、健診のプログラムを作成したのち、対象となる町との協議を行い、1月より保健センターの5歳児健診で予備調査を実施した。予備調査の結果を踏まえて、実際の研究で用いる項目および評価基準を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点の研究計画では、2023年度は、①研究実施自治体との協議、②健診での検査、問診票の作成、③予備調査実施(こどもへの検査、保護者・園担任への問診票)、④予備調査結果分析、⑤健診での検査、問診票の改訂の5つのステップを行うことを予定していた。 2023年度の進捗状況は以下のとおりである。①研究自治体との協議を行った。5歳児健診を行っている保健センターのスタッフと協議を行い、本研究の意義をお伝えしてご理解をいただくとともに、現在の5歳児健診の現場で本研究を行うための導線や方法、必要物品などを検討した。加えて、就学後の調査を見据えて教育委員会とも協議を行い、理解を得た。②5歳児健診で読み書き障害をスクリーニングするための検査、問診票を作成した。作成に当たっては、先行文献を検索し、言語、運動の専門家との協議を繰り返して検討を行った。3領域を含む検査は10分程度で実施可能なものであり、将来的な健診での実装を踏まえたものとなった。③④予備調査として、4月より実施する予定の健診の場を用いて、1-3月に子ども向けの検査を実際に行った。⑤結果をもとに検査を決定した。 上記の通り、①-⑤のすべてを同年度中に完了することができた。 したがって、予定通り順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度作成した調査内容をもとに、5歳児健診の場で「音韻認識」「視知覚認知」「手先の巧緻性」の3領域を想定した、読み書き障害ハイリスク軍の発見のためのスクリーニングを実施する。 それとともに、3領域のいずれかでハイリスクと考えられたケースに対して年長時に実施する療育プログラムを開発する。年長での支援の対象は、5歳児健診で行った3領域の検査いずれかで「ハイリスク」であり、保護者から希望があった児である。まず、年長の春に、健診時に不通過であった検査項目と追加項目を個別で実施する。その時点で再度不通過であった児については、支援プログラムへの参加を勧奨する。支援プログラムは、月1回60分、計6回のカリキュラムで実施する。その中で、名大スタッフがグループ指導にて児への指導を行う。併せて、保護者に対して家庭で行う課題を提示し、日常生活での支援にもつなげる。①音韻認識(語想起などのことば遊び、しりとり、遊び歌などを用いたプログラム)②視知覚認知(独自の絵図、小さな遊具などの教材を用いたプログラム)③手先の巧緻性(独自の描画課題、小さな遊具を操作するプログラム) 2025年度以降は、上記調査を継続するとともに、小学1年生時に実施する読み書き調査の準備と同調査で読み書き障害のハイリスクであると考えられた児童への支援プログラムの開発を行っていく。
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