研究課題/領域番号 |
23H01033
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (00533960)
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研究分担者 |
石井 敬子 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10344532)
大坪 庸介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80322775)
山末 英典 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80436493)
野口 泰基 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90546582)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 孤独感 / 心拍変動 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年社会問題として深刻化している「孤独」に焦点を当て、近年神経科学の分野で注目されている「能動的推論仮説」(脳は「予測機械」、すなわち世界の外部状態を推論し、予測する統計的な器官と位置づけ、脳が持つ内部モデル(予測)と、環境からの信号とのずれ(予測誤差、自由エネルギー)を最小化するために、知覚と行為の両方が協働して最適化するという仮説)に基づき、人が孤独に陥るリスクの可視化を試みる。 孤独が脳の構造と機能、さらには自律神経系の機能に影響を与えることが先行研究で示されており、私たちの以前の研究において、孤独が友人からのコミットメントシグナルに応じた関係価値の計算に悪影響を与えることが分かっている。 今年度我々は、自律神経機能を反映すると考えられている心拍変動(HRV)が日本の若者の孤独感と関連しているかどうか、また自律神経活動を実験的に改善させることにより友人の行動に応じた関係価値の計算プロセスが変化するかどうかを調査した。 実験の結果、孤独感と HRV の総パワーに占める高周波 (HF) 成分の割合との間には負の相関があり、孤独と低周波 (LF) 成分/HF成分の比(LF/HF)との間には正の相関があることが示された。 それに加えて、実験的なHRV の改善により、孤独が影響する関係価値判断も改善することが示された。 これらの知見は、孤独による認知機能の変化は不可逆的ではないことを示唆しており、自律神経機能を改善することで、孤独によって変化した認知機能を改善することが可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目に結果を出すことができ、論文として1本英文誌に投稿中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
近年の社会・文化心理学的研究では、人の遺伝的な特性と文化的特性が相互作用し生態学的環境への適応が達成されているという考え方(Gene&environment correlations (rGE))が支持されるようになり、人のある特定の心の状態は、どのような遺伝的特性や行動特性を持っている人が、どのような社会的・文化的環境におかれた場合に生じやすいのか、ということを考えるようになってきている。 そこで次年度は、実験参加者の遺伝子多型を解析し、どのような遺伝的特性・心の性質・行動特性を持っている人が、どのような社会的・文化的環境におかれた場合に、孤独になりやすいのかについて解析する。
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