研究課題/領域番号 |
23H01059
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
福島 穂高 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (60645076)
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研究分担者 |
中澤 敬信 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (00447335)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 恐怖記憶制御 / 海馬 / マウス / 脳機能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、恐怖体験の記憶(恐怖記憶)が思い出(想起)された後に、海馬において、どのような分子機構を介して再び記憶が脳に貯蔵されるのかを明らかにすることである。恐怖記憶を想起させた後のマウス海馬からRNAを調整して様々な遺伝子の発現量を解析したところ、初期応答遺伝子であり神経活動のマーカーとして広く用いられるc-fosの発現量が有意に上昇していたことから、恐怖記憶の想起に伴い海馬の神経細胞が活性化することが示唆された。一方、PTSD患者の末梢血においてホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)の発現量が低下していることから、恐怖記憶想起後のマウス海馬及び末梢血におけるPDE4B発現量を解析した。その結果、マウス海馬及び末梢血の両方においてPDE4Bの発現量は有意に低下していた。PDE4BはセカンドメッセンジャーであるcAMPを分解することから、恐怖記憶の想起に伴うPDE4Bの発現量の低下によるcAMP情報伝達経路の活性化が示唆された。加えて、恐怖記憶を想起させる前にPDE4B阻害剤をマウスへ投与することにより、想起が抑制され、その後の恐怖記憶が減弱したことから、PDE4Bは恐怖記憶の想起及びその後の恐怖記憶制御機構にも関与することが示唆された。なお、これらの研究成果は、国際学術誌であるMolecular Psychiatryに掲載された。本研究において同定された分子機構を標的とした新規治療法が開発されれば、PTSDなど恐怖体験をもととする精神疾患の治療・予防に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
恐怖記憶想起後のマウス海馬において、特徴的な発現変動を示す分子であるPDE4Bを抽出することに成功した。また、マウスへのPDE4Bの阻害剤投与により、恐怖記憶想起が阻害されること、その後の恐怖記憶が減弱することも見出し、これら研究成果を国際学術誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はない。記憶制御に関する他の分子機構についても解析を進める。
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