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2023 年度 実績報告書

強相関トポロジカルポンプの対称性とバルクエッジ対応

研究課題

研究課題/領域番号 23H01091
配分区分補助金
研究機関筑波大学

研究代表者

初貝 安弘  筑波大学, 数理物質系, 教授 (80218495)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードトポロジカルポンプ / バルク・エッジ対応 / 電子相関 / トポロジカル相 / 対称性が保護するトポロジカル相
研究実績の概要

トポロジカルポンプ(断熱ポンプ)は,1980年代にThoulessにより概念的に提唱されたトポロジカル現象であり,2010年代に冷却原子系ではじめて実験的に実現され,近年研究が一段と活発化している.また,トポロジカル相の基礎原理であるバルク・エッジ対応が果たす意義,特に実験的観測量に関して通常のトポロジカル相とトポロジカルポンプでは全く異なることを我々が2016年に明らかとしたことを基礎に,本研究では電子相関が本質的な系におけるトポロジカルポンプに対して,その基礎理論を確立し,ゲージ対称性のもとでバルク・エッジ対応の普遍性と探求する研究を実施した.また,トポロジカルポンプにおけるバルク・エッジ対応の普遍性を更に確立し,本研究の成果を多分野まで拡張することと新しいブレークスルーの発見を目標にバルク・エッジ対応をキーワードとして関連分野との異分野交流,情報収集も広く行ってきた.
一般にD次元のトポロジカルポンプは,周期的な断熱パラメター(時間)とする励起ギャップが有限な一連の(D-1)次元のトポロジカル相(集合)と考えることができる.特に1次元系の強相関系の数値研究手法がこの2,30年において成熟してきたことを背景とし,2次元のトポロジカルポンプ現象に関して,具体的な数値計算を併用する研究が極めて有効であることを本研究課題において明らかとした.その一例としてQ種類のフェルミ粒子系が強く相互作用する模型におけるトポロジカルポンプ現象を一般に論じることで,トポロジカルポンプ現象におけるバルク・エッジ対応を正確に記述する一般論を構築し,出版することで広く周知した.さらに数値的研究(数値的対角化と密度行列繰り込み群)を併用することでその正当性を示し,有効性を確立すると共にリング交換模型や最近接を越えて相互作用する系など,新奇トポロジカルポンプ現象を広く探索,研究した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

1+1次元の強相関トポロジカルポンプの研究を遂行する過程で,非自明で量子化する電荷移動量に対応するチャーン数の起源にはベリー接続としてのDirac 単磁極が存在すべきであるとの認識にいたった.この観点を追求し明確化することでポンプの経路上で特に対称性が高い複数の点とそれらをつなぐ一連の(連続パラメターを含む)対称性が保護するトポロジカル相の意義が明らかとなった.この一連の系の転移点が上述のDirac単磁極を与えるのである.この視点はトポロジカルポンプの本質的部分であるが,研究当初は,漠然とこの事実は理解していたが,このような明確な理解には至っていなかったため,当初の計画以上に研究の進展があったと自己評価する.
また,このディラック単磁極に対応する対称性が保護するトポロジカル相における量子相転移(有限系の局所ひねり下でのギャップクロージング現象)の研究も本研究計画に含めることでトポロジカルポンプ現象におけるバルク・エッジ対応の意義の解明,現象の全容解明をめざす.

今後の研究の推進方策

当初の計画通り,トポロジカルポンプにおいてはゲージ対称性が本質的に重要である点に着目し,研究を進める.特に強相関系においては多数の自由度が強く相互作用するため,何が本質的に重要な自由度であるかが一見しただけではわかりにくいが,このゲージ原理に基づき保存する電荷を定義することで,本質的な自由度を明らかとする.この立場から,トポロジカルポンプ現象におけるバルク・エッジ対応の普遍的意義を確立する.
また,今までの研究過程で新しく明確になったポンプ経路が複数回通過する対称性の高い系とそれらをつなぐ一連の対称性が保護するトポロジカル相とその相転移,つまり対称性が保護するトポロジカル相における量子相転移,ギャップクロージング現象も研究の対象とし,研究の一段の展開を目指す.この現象は,バルク・エッジ対応の立場からは,対称性が保護するトポロジカル相における,エッジ状態の生成,消滅の機構を解明することに対応し,トポロジカル相における原理としてのバルク・エッジ対応の新しい視点であり,重要で意義も大きい.
以上の新しく得られた知見を含めた今後の本研究の推進方針は,ゲージ原理を基礎とし,ポンプ経路が通過する点を(ポンプ経路以外のパラメータを用いて)連続につなぐ、より対称性の高い一連の系とその相転移をバルクエッジ対応の観点で総合的に記述,解明することで,ギャップが有限な経路で定まるトポロジカルポンプ現象に関して、バルク・エッジ対応をその原理として、その全容を解明することである.

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Bulk-Edge Correspondence for Nonlinear Eigenvalue Problems2024

    • 著者名/発表者名
      Takuma Isobe, Tsuneya Yoshida, and Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      Phys. Rev. Lett.

      巻: 132 ページ: 126601

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.132.126601

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Higher-order topological heat conduction on a lattice for detection of corner states2023

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Fukui, Tsuneya Yoshida, Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      Phys. Rev. E

      巻: 108 ページ: 24112

    • DOI

      10.1103/PhysRevE.108.024112

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Z2×Z2 symmetry and Z4 Berry phase of bosonic ladders2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshihito Kuno, and Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      Phys. Rev. A

      巻: 108 ページ: 13319

    • DOI

      10.1103/PhysRevA.108.013319

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A symmetry-protected exceptional ring in a photonic crystal with negative index media2023

    • 著者名/発表者名
      Isobe Takuma, Yoshida Tsuneya, and Hatsugai Yasuhiro
    • 雑誌名

      Nanophotonics

      巻: 12 ページ: 2335-2346

    • DOI

      10.1515/nanoph-2022-0747

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Topological pump of SU(Q) quantum chain and Diophantine equation2023

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Hatsugai and Yoshihito Kuno
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 107 ページ: 235106

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.107.235106

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nontrivial Topology of Nontopological Nonlinear Waves2023

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      JPSJ News Comments

      巻: 20 ページ: 10

    • DOI

      10.7566/JPSJNC.20.10

  • [学会発表] Analysis of the bulk-boundary correspondence in nonlinear eigenvalue problems by the auxiliary eigenvalues2024

    • 著者名/発表者名
      Takuma Isobe,Tsuneya Yoshida,Yasuhiro Hatsugai
    • 学会等名
      American Physical Society March Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Quantitative characterization of flat band states in a molecular orbital model via hyperuniformity2024

    • 著者名/発表者名
      Takumi Kuroda, Tomonari Mizoguchi, Yasuhiro Hatsugai
    • 学会等名
      American Physical Society March Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Bulk-edge correspondence for topological materials : Experimental access to linking2024

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Hatsugai
    • 学会等名
      WPI-SKCM2 Spring Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 固有値の非線形性に誘起される例外点2024

    • 著者名/発表者名
      磯部拓磨, 吉田恒也, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
  • [学会発表] 判別式による例外点の特徴付け2024

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也, 奥川亮, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
  • [学会発表] J1-J2鎖におけるひねり下でのギャップクロージングとBerry位相2024

    • 著者名/発表者名
      山本晃大, 久野義人, 溝口知成, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
  • [学会発表] Topological pump of interacting systems: Zak phaseto Diophantine equation revisited2023

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Hatsugai
    • 学会等名
      Topology and Physics on Mount Carmel: A Conference in Honor of Joshua Zak
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] トポロジカルなエッジ状態:その起源と安定性2023

    • 著者名/発表者名
      初貝安弘
    • 学会等名
      CREST-さきがけ合同セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 幾何学的位相とゲージ場2023

    • 著者名/発表者名
      初貝安弘
    • 学会等名
      第68回物性若手夏の学校、集中ゼミ
    • 招待講演
  • [学会発表] 間接的バルク境界対応による非線形固有値問題の解析2023

    • 著者名/発表者名
      磯部拓磨, 吉田恒也, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] ランダム分子軌道モデルのフラットバンド状態の波動関数に対する超一様性の解析2023

    • 著者名/発表者名
      黒田匠, 溝口知成, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] 異方性をもつカゴメ格子上のXXZ模型におけるエッジ磁性2023

    • 著者名/発表者名
      青柳克, 初貝安弘, 河原林透
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] ダイマー化J1-J2モデルにおけるトポロジカルポンプ2023

    • 著者名/発表者名
      山本晃大, 久野義人, 溝口知成, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] トポロジカル磁壁ポンプ2023

    • 著者名/発表者名
      久野義人, 初貝安弘
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [備考] 初貝研究室:量子物性理論

    • URL

      https://patricia.ph.tsukuba.ac.jp/

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公開日: 2024-12-25  

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