研究課題
本研究では、サブピコ秒(1~10兆分の1秒)の時間幅を持つパルス電子線をプローブに用いた時間分解電子線回折装置に、ポンプ光として高強度のテラヘルツ波を発生するシステムを構築し、強電場励起による物質の時々刻々と変化する構造ダイナミクスを可視化する技術を創出する。そして、本技術を活用して、誘電体材料など多彩な物質の光励起あるいは電場励起による構造変化と機能との関係を世界に先駆けて展開し、構造ダイナミクス観測の科学技術基盤を開拓する。2023年度は、超高速時間分解電子線回折装置のサンプルチャンバーをテラヘルツ波を強集光できるようにレンズ等を中に導入可能な大型のもの拡張するとともに、これまではLiNbO3にパルス光を集光して発生していたテラヘルツ波をBNA有機結晶にパルス光を平行に入射することで同程度の強度でテラヘルツ波を発生させることに成功しており、これらの結果は、応用物理学会等で発表を行った。さらに、既存の透過型の時間分解電子線回折装置を用いて、テラヘルツ波励起しても興味深い現象を示すと考えられる遷移金属ダイカルコゲナイドの薄膜試料の光誘起のダイナミクス計測も行っている。特に、原子・分子の構造変化を観測することが得意な超高速時間分解電子線回折法を用いて、新たに半導体の伝導体における電子の運動を観測することにも成功している。これらは非線形光学効果を積極的に利用したものであり、米国化学会のJ. Phys. Chem. C誌や米国物理協会のAppl. Phys. Lett.誌などに掲載された。
2: おおむね順調に進展している
2023年度の目標としては、超高速時間分解電子線回折装置のサンプルチャンバーをテラヘルツ波を強集光できるように大型のチャンバーに拡張することであったが、これは装置の試料チャンバーそのものを交換する必要があった。2023年度のこの大規模な変更を行うことができたことは大きな進歩であると言える。したがって、2024年度よりスムーズな計測実験を行うことが可能であるため、おおむね順調に進展していると言える。また、既存のシステムを用いて、テラヘルツ波励起しても興味深い現象を示すと考えられる遷移金属ダイカルコゲナイドの薄膜試料の光誘起のダイナミクス計測も行い、さらに強誘電性を示す液晶分子も手に入っていることからも、研究が順調に進んでいると言える。、
2024年度は、100kV/cm程度のテラヘルツ波を超高速時間分解電子線回折装置の中で発生させるシステム開発を完成させて、強誘電液晶などのダイナミクス計測を進めていくことを目標とする。また、これらの結果はその他の時間分解分光計測や理論計算と整合することで、論文として発表していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 8件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
The Journal of Physical Chemistry C
巻: 127 ページ: 13149~13156
10.1021/acs.jpcc.3c02838
Applied Physics Letters
巻: 123 ページ: 181901
10.1063/5.0170153