研究課題/領域番号 |
23H01112
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
太田 竜一 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (90774894)
|
研究分担者 |
岡本 創 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 特別研究員 (20350465)
俵 毅彦 日本大学, 工学部, 教授 (40393798)
徐 学俊 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (80593334)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | エルビウム / 表面弾性波 / 光導波路 |
研究実績の概要 |
本研究はコヒーレンス時間が長く通信波長帯の光と共鳴するエルビウム(Er)励起電子と電子を内包する結晶に励起された機械振動の強結合状態の実現を目的としている。 初年度は、機械振動の空間的な閉じ込めを可能とする表面弾性波共振器をEr添加結晶上に作製することでEr励起電子と振動の相互作用を高め、両者のコヒーレントなエネルギー変換を達成した。また、実験結果の解析から弾性波歪の集中する素子表面付近ではErの光共鳴が強く変調されていることを明らかとし、素子表面付近のErへ選択的に光励起を行うことでEr励起電子と振動の相互作用が飛躍的に高まることを見出した。本成果はEr励起電子と機械振動の強結合状態へ向けた一歩と位置付けられる。 次にErに共鳴する光を素子表面へ効率よく伝搬させるSi光導波路とグレーティング構造をEr添加結晶上へ作製した。光導波路からの光染み出しを利用した素子表面付近のErへの選択的な光励起と発光検出に成功した。作製した光導波路の透過率は約6%であり、十分な信号強度を得るには今後透過率の改善が求められる。 Er励起電子と機械振動の強結合にはEr励起電子のコヒーレンス時間が重要であり、長いコヒーレンス時間を実現するには素子の温度を2 K以下まで下げ、4 Tを超える強い外部磁場を印加する必要がある。本年度は素子温度1.6 K、磁場強度9 Tまで到達できる冷凍機を用いた評価システムを立ち上げ、上記エネルギー変換の再現を行うとともにEr励起電子の共鳴周波数の磁場依存性などの評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Er励起電子と機械振動の強結合に必要となる両者のコヒーレントなエネルギー変換を達成し、相互作用のさらなる向上へ向けた素子表面付近のErへの選択的な光励起手法を確立した。Er励起電子のコヒーレンス時間向上のため新たな評価システムを立ち上げた。今後は表面弾性波共振器中に光導波路を構築することでEr励起電子と弾性波の強結合状態の実現に取り組む。
|
今後の研究の推進方策 |
光導波路とグレーティングの構造パラメータの最適化による透過率の向上を行う。強磁場下において、光導波路を介した励起電子と振動のエネルギー変換の観測を目指す。
|