研究課題
本研究は100テスラ環境における物質の構造をミクロに解明するものである。このために世界で初めてのポータブル100テスラ装置PINK-02を稼働し、SACLAにおけるX線自由電子レーザー実験する。この技術を利用して100テスラにおいて超強磁場相を発現するコバルト酸化物LaCoO3(α相、β相)、固体酸素(θ相)の結晶構造を解明することが目的である。初年度はPINK-02を完成させ、100テスラ発生、および100テスラ磁場中でのX線自由電子レーザー実験を立ち上げることが目標であった。実際にPINK-02を9月にSACLAに納入し、120テスラの発生を確認した。さらに1月には100テスラかつ低温10ケルビンにおけるLaCoO3のパウダー回折実験に成功した。これにより、本研究計画の基盤たる技術が達成された。
1: 当初の計画以上に進展している
実際にPINK-02による120テスラの発生は、ポータブル機として世界最高磁場を更新した。なおそれまでの最高記録はPINK-01による78テスラであった。さらに100テスラかつ低温10ケルビンにおけるLaCoO3のパウダー回折実験に成功した。これにより、ポータブル100テスラ装置が実現可能であるだけでなく、実際に物性実験に適用できることまで示された。これは世界に誇る先端的な実験技術である。本研究の今後の発展が非常に期待できる。
今後は100テスラおよび、低温におけるX線構造解析を、LaCoO3に対して推進する。これにより磁場によって誘起されるスピン状態秩序相の起源をミクロに解明する。また、固体酸素のθ相に対しても同様の実験を行うことで、θ相の結晶構造を解明する。これにより、ファンデルワールス結晶の構造安定性におけるスピンの役割を解明する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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