研究課題/領域番号 |
23H01124
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北川 俊作 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50722211)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超伝導 / 副格子 / 超伝導多重相 / NMR / NQR / 反強磁性 / 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
本研究では従来のスピン・軌道の自由度に加え、副格子の自由度を考えることで現れる奇パリティスピン一重項超伝導状態の実在性、発現機構を核磁気共鳴(NMR)測定/核四重極共鳴(NQR)測定を用いて実験的に解明する。奇パリティスピン一重項超伝導は2021年にCeRh2As2においてはじめて実験的に存在の可能性が指摘されたが、秩序変数など詳細についてはまだ明らかになっておらず、理論との不一致もある。そこで、我々はCeRh2As2の超伝導状態におけるスピン磁化率の空間分布や磁場依存性を調べ、理論提案と比較することで奇パリティスピン一重項状態の実在性を検証する。 本年度は①大気圧下での75As-NMR測定を用いた超伝導多重相におけるスピン状態の解明および②大気圧下での75As-NMR測定を用いた反強磁性相、四極子秩序相の相図作成に取り組んだ。CeRh2As2の超伝導はc軸方向の磁場に対して4 Tで超伝導1相から超伝導2相へ転移する。そこで超伝導1相、2相それぞれのスピン磁化率を測定し、超伝導スピン状態の特定を試みた。実験の結果、超伝導1相および超伝導2相がともにスピン磁化率が減少するスピン一重項超伝導状態であることが明らかになった。特に、高磁場の超伝導2相はAsサイトのスピン磁化率の減少から見積もった超伝導臨界磁場より実際の超伝導臨界磁場が大きくなっている。このような超伝導体は他になく、高磁場超伝導相においてスピン磁化率が空間変調している実験的証拠を得たということができる。また、 反強磁性相が低磁場の超伝導1相のみと共存し、高磁場の超伝導2相とは共存しないという結果を得ている。以上の結果はPhysical Review Letters誌に掲載され、さらにEditors’ suggestion に選ばれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画通り、①大気圧下での75As-NMR測定を用いた超伝導多重相におけるスピン状態の解明および②大気圧下での75As-NMR測定を用いた反強磁性相の相図作成が行えた。さらに試料提供者より、さらに高品質なCeRh2As2の単結晶試料の提供を受けた。この試料ではこれまでの試料で不鮮明であった四極子秩序や反強磁性秩序がより明確に観測できている。そのため、新試料の測定によって四極子秩序相の相図作成及び秩序変数の詳細解明が行えると期待できる。 また、超伝導多重相を示すスピン三重項超伝導体UTe2など本研究と関連が深い研究に関しても順調に成果を上げており、統一的な理解に向けて進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年の後半に試料提供者よりCeRh2As2のより高品質な単結晶試料の提供を受けた。この高品質単結晶試料は我々のNMR/NQR測定によっても以前の試料より質がいいことや、超伝導相内の反強磁性転移がより鮮明になっていることが確認できている。さらに、以前の試料では見られなかった四極子秩序と思われている転移温度での信号消失も観測できた。そこで2024年度以降はこの高品質単結晶試料を用いて改めて大気圧化の超伝導多重相および反強磁性、四極子秩序の相図作成及び物性解明に取り組むとともに圧力測定にも取り組んでいきたい。新試料を用いることでこれまで不鮮明だった四極子秩序状態や磁気相の詳細が明らかになると期待できる。
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