研究課題/領域番号 |
23H01127
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
細越 裕子 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50290903)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 量子スピン系 / 整数スピン / 有機磁性体 / 磁気相互作用 / ポリラジカル |
研究実績の概要 |
分子内に2つのラジカル基を含む有機ビラジカルの合成を行った。分子内に2つのS=1/2を配置し、このスピン間に働く分子内磁気相互作用が強磁性的であるとき、基底状態はS=1となる。ニトロキシド系安定ラジカル基を用いて、π共役系で連結する際の相対配置を変化させた一連のビラジカルを合成した。2つのラジカル基を連結する際、π共役系の長さのみならず、π共役系の形状や、π共役平面の二面角を変化させた。こうしたπ共役系の変化によって、分子内磁気相互作用の符号と大きさとを制御することに成功した。 合成した物質について磁化測定を行い、分子内磁気相互作用を決定した。分子軌道計算を行い、磁気相互作用の計算値と実験値とを比較し、計算予測の有効性を評価した。分子軌道計算は、分子内磁気相互作用を過大評価する傾向があるものの、分子骨格との間の相関を定性的に再現できることを明らかにした。 単結晶試料を育成し、単結晶構造解析と磁化測定を行った。結晶中での分子間配置と予想される磁気ネットワーク、磁気測定の結果から予測される磁気ネットワークから、有意な分子間磁気相互作用を発現する分子間配置を抽出した。分子骨格と分子間磁気ネットワーク形成の相関について知見を得ることができた。原子置換による磁気相互作用の制御を試みている。 合成した新物質が、一次元あるいは二次元磁気格子を形成することを見いだし、低温磁場中における物性を評価した。鎖間、面間相互作用の存在について考察した。磁場中で出現する新しい磁気相を観測し、磁気的な競合について考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子内に2つのS=1/2ラジカル基を含む有機ビラジカルの合成を行い、分子内のS=1/2間に強磁性相互作用が働く、S=1種の合成に成功した。2つのラジカル基を連結するπ共役系によって、分子内磁気相互作用を制御することに成功した。磁化測定を行い、分子内磁気相互作用を決定し、分子軌道計算による磁気相互作用の見積もりの有効性を実証した。また、分子骨格と分子間配置および分子間磁気相互作用との相関について、分類した。以上の結果により、今後の分子設計の糸口を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた結果を元に、有機磁性体の新物質合成を行う。強い分子内強磁性相互作用によるS=1ビラジカル、および分子間相互作用と同程度の大きさの分子内強磁性相互作用を持つ、基底三重項ビラジカルの合成を行う。結晶中で形成される磁気ネットワークと磁気状態について、明らかにする。温度、磁場、圧力などの外場応答性について明らかにし、次近接相互作用や磁気的な競合が磁気状態に与える影響についても考察する。
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