研究課題/領域番号 |
23H01172
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木内 建太 京都大学, 基礎物理学研究所, 特任准教授 (40514196)
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研究分担者 |
井岡 邦仁 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80402759)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 数値相対論 / 連星中性子星合体 / 重力波 / ショートガンマ線バースト |
研究実績の概要 |
2023年度は、連星中性子星合体の第一原理シミュレーションを以下の二つの場合について行った。シミュレーション結果はPhysical Review LettersとNature Astronomyに掲載された。 合体後比較的短時間でブラックホールが形成される連星中性子星モデル:核密度状態方程式SFHoを採用し、連星質量をGW170817と矛盾しないものに選んだ。合体後17ミリ秒程度でブラックホールと降着円盤が形成されるが、円盤の進化を物理時間一秒間追跡した。これは既存の10倍の長さのシミュレーションであり、世界最長である。富岳を使用した。降着円盤内で磁気回転不安定性が起こり、乱流粘性が生成される。この粘性により角運動量輸送が促進されるとともに、円盤が膨張し断熱冷却が起きる。円盤形成から約0.7秒程度でニュートリノによる冷却効率が下がり、粘性加熱による円盤風が駆動されることを突き止めた。円盤風の総量は太陽質量の0.8%程度であり、合体時に放出される動的放出物質(太陽質量の0.6%程度)と併せても、GW170817に付随した電磁波対応天体を説明するには足りないという結論を得た(少なくとも太陽質量の5%程度必要)。この結果を基にSFHoは核密度状態方程式としては支持されないという結論付けた。 合体後長時間ブラックホールに崩壊しない連星モデル:核密度状態方程式DD2を採用し、連星中性子星質量を2.7太陽質量に選んだ。合体時のケルビン―ヘルムホルツ不安定性により磁場が短時間に効率的に増幅する。その後、磁気回転不安定性により乱流状態が維持される。この乱流成分が実効的な起電力を生み出し、大局的な磁場がαΩダイナモ機構によって生成されることを突き止めた。大局的な磁場が相対論的ジェットを駆動し、ショートガンマ線バーストの中心エンジンとなり得るという結論を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度に本申請課題の目標(大局的ダイナモ機構の解明)をほぼ達成した。
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今後の研究の推進方策 |
課題申請時の目標をほぼ達成したため、今後は連星中性子星合体における大局的磁場生成機構について、さらに掘り下げる。具体的には、合体後0.1秒程度生き残る連星モデルの場合に、αΩ機構が働くのか精査する。
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