研究課題/領域番号 |
23H01181
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 英斉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 講師 (30376529)
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研究分担者 |
早川 勢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (00747743)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 不安定核 / 天体核反応 / ニュートリノ / 超新星爆発 / トロイの木馬法 |
研究実績の概要 |
本研究は、イタリアの安定核ビーム実験と日本の不安定核ビーム実験によって、超新星爆発のニュートリノ過程で重要な11C(α,p)反応を測定する計画で進められている。 2023年度にはイタリアの安定核ビーム実験の詳細計画が現地の研究者との綿密な相談により、具体化することができた。当初計画では、イタリアのINFN-LNS研究所で実験を行う予定であったが、研究所の加速器アップグレードが予定より大幅に遅れており、実験が実行できるのが2025年以降になる見込みであるとの連絡があった。そこで、共同研究者と相談し、同様の実験をイタリアのレニャーロ(INFN-LNL研究所)において行う計画を改めて立て、2023年の12月に、同研究所の実験採択会議に実験提案書を提出した。しかし、加速器のスケジュール上の問題により、判断は保留、半年後に再審査を行うという結果が通知された。再審査で提案書が採択されれば、2024年度後半に測定が実施できる見込みであるが、LNS研究所の動向も注視し、より良い実験を行いたい。 一方の日本で行う不安定核ビーム実験であるが、トロイの木馬法の専門家や天文理論研究者との相談の結果、この不安定核ビーム実験は、安定核ビーム実験の結果を踏まえて行う方が良いということ、また、安定核ビーム実験で逆反応が測定できる11C(α,p)14Nよりも、長年の懸案である、高温天体燃焼への入り口となる不安定核反応 14O(α,p)17Fを測定する方がインパクトが大きいと思われることから、まず14O(α,p)17F反応を優先して研究することを決定し、シミュレーションなど詳細検討を進めた。いずれの測定においても重要な、シリコン検出器の回路系拡充は、2023年度に進めており、関連する6He+p反応測定実験に実際に使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イタリアのINFN-LNS研究所で加速器実験を申請する予定であったが、同研究所の加速器施設アップグレードが大幅に遅れており、同実験が実行可能であるイタリア・レニャーロのINFN-LNL研究所での実験を行う可能性も考慮し、計画を再検討した。実験提案を行う段階まで辿り着けたが、採択は加速器の運用スケジュールの問題から、保留状態にとどめられた。しかし次回の会議で実験が採択され、2024年度内に順調に実験遂行できるならば、当初の計画通りとなる。 日本側の不安定核ビーム実験は、戦略を練り直し、14O(α,p)17F反応を優先的に測定することを考えており、そのために検出器系の最適なデザインも再検討を行なっている。結果として、当初想定より時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、当初計画では安定核ビーム実験と不安定核ビームで同じ反応を測定する予定であったが、イタリアの研究者との相談の結果、不安定核ビーム実験の意義と実行可能性は、安定核ビーム実験の結果が出た上で見定めることが妥当であると判断した。そのため、不安定核ビーム実験は、長年の懸案である重要反応であり、逆反応では測定できないが、11C(α,p)反応と類似している、14O(α,p)反応を優先して研究するという方策を取る。11C(α,p)反応の不安定核ビームの実施の是非は、その後改めて判断したい。 安定核ビーム実験は、当初イタリア・カターニアのINFN-LNS研究所で遂行する予定であったが、加速器のアップグレードが予定より時間がかかり、その後も当面は既に採択された実験課題が優先されると見込まれるため、レニャーロのINFN-LNL研究所で実験提案を行うという可能性を検討中である。いずれにせよ、実験の内容としては計画と同じであるため、大きな問題ではないと考える。
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