研究課題/領域番号 |
23H01208
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
重河 優大 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員 (60845626)
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研究分担者 |
山口 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70724805)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | トリウム229 / 原子核時計 / イオントラップ / 真空紫外光 / 核異性体 |
研究実績の概要 |
Th-229mはTh-229原子核の第一励起準位であり、8.3 eVという極端に低い励起エネルギーを持つ。基底状態(Th-229g)からTh-229mへのレーザー励起により、超高精密な「原子核時計」を作製できると期待されている。Th-229mが内部転換によって脱励起する場合、時計の精度が大幅に落ちてしまう。本研究では、「①3価のTh-229mイオンのイオントラップ」「②フッ化物結晶へのPa-229のドープ」という手法を開発することでTh-229mの内部転換を禁制にし、γ線を検出することを目指す。 「①3価のTh-229mイオンのイオントラップ」に関して、233U線源から飛び出してくる229m,gTh3+を真空中に引き出す装置を2種類開発した。一つ目の装置では、引き出した229m,gTh3+をトラップし、レーザー分光を実施できる。この装置を用いることで、229mTh3+のレーザー分光に成功し、229mTh3+の半減期を世界で初めて決定できた。一方、もう一つの装置では、引き出した229m,gTh3+を質量分離することで、バックグラウンド光子源となる不純物イオンを除去できる。質量分離器の後段にイオントラップを設置することで、229mTh3+から放出されるγ線を観測する。本装置で引き出された229mTh3+の量は1秒あたり80個程度であり、γ線を検出するのに十分な量を引き出すことに成功した。 「②フッ化物結晶へのPa-229のドープ」に関して、Paを表面電離法によってイオン化し、結晶に打ち込む装置を開発した。グラファイトを塗布したフィラメントにPa-233試料を滴下し、フィラメントを2000度程度まで加熱してイオン化・打ち込みの試験を行った。効率は0.5%程度とイオン化効率の理論値に近く、揮発性の低いPa化合物をグラファイトで効率よく還元・揮発させられていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
229mTh3+のトラップとレーザー分光により、229mTh3+の半減期を初めて決定できたため。また、229mTh3+を効率よく引き出し質量分離できる装置を開発できたため。さらに、Paをイオン化し結晶に打ち込む装置を開発し、Pa-233を用いた試験で比較的良い効率でイオン化と打ち込みに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
「①229mTh3+のイオントラップ」に関して、今年度は、質量分離器の後段にイオントラップを設置し、229m,gTh3+を1000 s程度トラップすることを目指す。その際、ゲッターポンプやガス精製器を用いて、イオンのロスの原因となるトラップ中の不純物を低減する。さらに、γ線を測定するための光電子増倍管を設置し、229mTh3+由来のγ線の直接測定を試みる。 「②フッ化物結晶へのPa-229のドープ」に関して、今年度は、Th標的へのプロトン照射により、Pa-229を製造し、Pa-229をTh-232や核分裂生成物等から化学的に分離する。得られたPa-229試料を開発済みの装置に導入し、Pa-229のイオン化とCaF2結晶への打ち込みを実施する。Pa-229入りの結晶を光子測定装置に導入し、Th-229m由来のγ線の観測を試みる。一方、Pa-229の他にPa-230やPa-232等の同位体不純物も含まれ、それらがバックグラウンド光子源となってしまう。そのため、Pa-229を同位体分離して精製するための装置開発を並行して実施する。具体的には、イオン化されたPa-229を四重極イオンガイドで輸送し、その際にバッファーガスとの衝突させることでイオンビームのエミッタンスを小さくする。その後、イオンを四重極質量分離器で質量分離し、イオンを30 keVまで加速して結晶に打ち込む。
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