研究課題/領域番号 |
23H01212
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須藤 靖 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90183053)
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研究分担者 |
林 利憲 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD) (00972621)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | ブラックホール / 天体力学 / 三体問題 / 重力波 / 力学的安定性 |
研究実績の概要 |
本研究は、すでに重力波によって直接検出されている連星ブラックホールを、可視光で検出する可能性を念頭におき、恒星と連星ブラックホールからなる3体系の力学を定量的に理解し、その恒星の運動から連星ブラックホールの性質を解明することを目的としている。 我々はすでにそのような提案を数本の論文として発表していたが、位置天文衛星Gaiaが発見した恒星とブラックホールからなる連星系Gaia BH1に対して、それが単独のブラックホールとの連星系ではなく、連星ブラックホールとの3体系である場合を詳細に調べ、その検出可能性をまとめた論文を発表した。その後、カルフォルニア工科大学のグループが、まさにその方法論に基づいた可視光追観測を行った。結果は、連星ブラックホールである可能性に強い制約を課したものであるが、我々の提案した方法論が、今後数多く発見されるはずのGaia 恒星ーブラックホール連星系の中に潜んでいる可能性のある、連星ブラックホールを発見するうえで、現実的にも重要であることを示したものである。 また、数値シミュレーションを用いて、銀河中心に存在する超巨大質量ブラックホールのスピンと、母銀河の角運動量ベクトルの相関についての理論予言を行い、その観測的検証法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題申請時に発表していた理論論文での提案に適合する恒星ーブラックホール連星系が観測から発見され、我々の提案の検証が現実的であることが明らかとなった。そこで、その具体的なターゲットに対して詳細な理論予言を行い、米国の観測グループがその方法論に基づいて観測的制約を導いたことは、今後の発見に大きな期待をもたらすものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きGaia衛星が発表する新たな恒星ーブラックホール連星系に着目し、必要に応じてよる具体的な計算を行う。それとは独立に、銀河中心の巨大ブラックホール周りを公転する太陽の数倍程度のブラックホールからなる連星という違うタイプの三体系に着目し、中心巨大ブラックホールによる3体力学的効果によって、どのような力学進化を遂げるかを数値シミュレーションによって明らかにする。さらにブラックホール3体系からの重力波は、その不安定性との関係で明確な理論テンプレートが構築されていないため、安定な階層的3体系に限定して、一般的な重力波モデルを構築することを目指す。
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