研究実績の概要 |
始原的隕石中に存在する太陽系最古の固体物質 CAI (Ca-Al-rich inclusion; Ca, Al に富んだ難揮発性包有物) は、原始惑星系円盤内の広範囲に亘って存在し、惑星形成を駆動した可能性が高い。本研究では、CAI に着目して、申請者が開発した高精度安定同位体測定法と希ガス年代分析を組み合わせることで、CAI の位置情報を含んだ希ガス年代を決定する。本研究手法を様々な始原微小試料へ適用することで、希ガス同位体をトレーサーとした、太陽系誕生時の物質輸送・(微)惑星形成過程についての詳細な描像を得ることを目指す。本年度は、比較的大きく大量の CAI が含まれる複数の炭素質隕石 (CAI 10 vol% 含有し、1 粒あたり Cr: 3000 ppm, Ti: 1000 ppm, I: 20 ppb 程度) を試料として用い、試料 (0.5-1 g) を自動精密切断機で切断後、切断により半面が露出した CAI を含む岩片をエポキシ樹脂に固定、樹脂部とともに輪切りにし、鏡面研磨・炭素蒸着を施した後、電子顕微鏡を用いて CAI の観察・記載を行った。その後、年代測定を行うためにCAIを含む隕石岩片を、京都大学複合原子力科学研究所の KUR 研究炉において中性子照射した。放射能が減衰した後、照射後の試料を回収した。また、試料を取り出すための抽出装置として、マイクロミルを新規に購入し、今後の分析のためにセッティングを終えた。本年度の研究試料作成および抽出環境のセッティングによって、今後の微小物質研究の足がかりとなる準備ができた。
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