消費型から循環型への社会移行において高効率かつ長寿命なプロセス開発を可能とする低摩擦材料の開発は不可避の課題である。基材内部からの表面偏析により形成された濃厚ポリマーブラシ(CPB)は超潤滑と自己修復性をあわせもつ一方、実用化においては遅い自己修復や超潤滑が平滑対向面に限定されるといった課題が残る。本研究ではダブルネットワークゲルの構成要素であるポリマーネットワークと溶媒層をそれぞれCPBの担持相と拡散相として適用したCPB複合ゲルを開発し、ゲル骨格の架橋構造、CPBの形状・分子量を制御することで迅速な分子拡散と高耐久性を有し、超潤滑を粗面においても発現する自己修復性材料の創製と制御を狙う。本年度はCPBの担持相としてシリコーン系ポリマーをベースとしたダブルネットワークゲルの合成条件の検討と機能評価、およびCPBの界面構造解析を行った。シリコーン系ポリマーは疎水性が高く、内部に担持させた親水性ポリマーの水界面への相分離によるCPB形成が期待できる。組成変化させた各種ゲルの機械的強度試験および接触角試験から、得られたゲルがCPB複合ゲル骨格として適用可能であることを見出した。また、複合ゲルの高機能化においてはポリマーブラシの密度が耐久性や自己修復性といった機能発現において重要となる。そこで重水界面におけるポリマーブラシの中性子反射測定による界面構造評価を行ったところ、高密度・高伸長したCPBであることを見出した。
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