研究課題/領域番号 |
23H01333
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田坂 裕司 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00419946)
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研究分担者 |
PARK HYUNJIN 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00793671)
柳澤 孝寿 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 主任研究員 (20359186)
堀本 康文 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (60822525)
村井 祐一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80273001)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 粒子懸濁液 / レオロジー / 非定常せん断 / 流れの遷移 |
研究実績の概要 |
粒子懸濁液のレオロジー物性,特に非定常剪断下における流動物性の評価とナノ粒子懸濁液の実効粘度およびそれを与える構造要因,および粒子懸濁液の流動研究を主題に研究を行った. 非定常剪断下におけるレオロジー物性評価では,数10ミクロンと100ミクロン程度のサイズの異なるポリエチレン粒子をそれぞれシリコーンオイルに分散させ,密度差の小さい環境での実験を行った.これまでに開発を行ってきた超音波スピニングレオメトリを用いた計測を行い,異なる振動周波数条件での実効粘度評価を実施した.計測では当初,粒子サイズが大きな条件において,歪み速度が小さい領域において明瞭な粘度の上昇が見られた.これに対して理論検証ならびに異なる条件での検証実験を行った結果,粘度上昇は速度分布計測における誤差が原因であり,実際には粘度上昇は生じないとの結論を得た. ナノ粒子懸濁液の実効粘度については,これまでの研究により,濃度に応じて数百倍もの粘度上昇が生じること,および,剪断を加えることにより粘度が減少し,十分に高い歪み速度では連続相の粘度程度に漸近することが示されていた.今年度の研究ではこれを詳細に調査し,体積率が2%を超える場合に粘度上昇が発現することを見いだした.さらに,この粘度上昇とずり減粘をもたらす要因として構造の形成と崩壊に注目し,X線小角散乱と動的光散乱による構造サイズの抽出を行った.その結果として,ほぼ球形のナノ粒子が液体中でアスペクト比7程度の針状の構造を形成すること,またそれらが干渉して数百ナノ程度の大きさの構造を形成することを発見した. 流動実験については,代替として高分子溶液を用いた対流実験を行い,動画像処理計測によりずり減粘を持つ流体の特徴的な現象を見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子懸懸濁液のレオロジー物性評価については,これまでに注目していた非定常剪断下における粘度上昇が,計測誤差によるものと確定された.一方で,ナノ粒子懸濁液について,他研究室の協力を必要とする構造解析の実験が予定よりも早く実施できたため,全体として想定よりも早く進んでいると判断した. 一方で,粒子懸濁液を用いた流動研究については装置などの準備はできたものの,高分子溶液を用いた予備的実験に留まっており,全体としてはおおよそ予定通りの進展であると評価した. その他,実績の概要では書き切れなかったが,スピニングレオメトリ専用の計測機器開発については順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度粒子懸濁液を用いた実験を行う過程で,比重や大きさなど理想的な粒子を取得する困難さを経験した.これに対して,予備的な実験ではあるが,簡単な手法で比重や大きさを調整した粒子を量産できる手法を開発した.今後の研究では,レオロジー物性評価について,これらの粒子を用いた評価実験を行うとともに,ナノ粒子懸濁液の構造解析に関する実験を進め,そのマルチスケール性を明らかにする. 流動研究については,高分子溶液を用いた予備実験をさらに進めるとともに,上記物性評価試験の結果を反映させた,実際の粒子懸濁液を用いた流れの遷移実験を行う. 計測機器開発については,ハードウェアの開発がおおよそ終了しており,今年度はソフトウェアの開発,ならびにアルゴリズムの最適化について注力する予定である.
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