研究課題/領域番号 |
23H01362
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
八木 貴志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (10415755)
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研究分担者 |
岡島 敏浩 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部), あいちシンクロトロン光センター, 副所長 (20450950)
竹谷 敏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (40357421)
重里 有三 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90270909)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 熱伝導率 / スイッチング / 水素化 |
研究実績の概要 |
本年度は、水素化反応制御による熱伝導率スイッチ薄膜のON時の金属相の熱伝導率を支配する電気伝導率に着目して、1-2元系の金属合金膜を作製し、熱伝導率の計測と水素化反応性を検証した。評価した系は、Gd(GdHx)、Sm、Y-Mg, Ni-Mg, Mn-Mg、Co-Mgである。いずれの系も、希薄水素ガスによる水素化(半導体、OFF状態)と、大気中での脱水素化時(金属、ON状態)に明瞭な熱伝導率のコントラストを確認した。特にNi-Mg系はON時の熱伝導率が14 W/(m K)に達し、10倍超のスイッチング比が得られるとともに繰り返しスイッチングを実証した。 水素化反応制御による熱伝導率スイッチの弱点の一つとして、水素化時の体積膨張がある。Ni-Mg系の水素化時は25 %の体積変化があり、スイッチングによる応力剥離等が課題である。そこで、GdH2とGdH3間の膨張変化が3%程度と小さいことに着目し、これらの熱伝導率スイッチとしての検証を行った。この結果、GdH2-GdH3間のスイッチング比は5.4倍でかつ良好な繰り返し性が得られ、膨張変化の少ない材料として有望であることが示された。本年度に検証した材料の代表的な熱伝導率スイッチング比はNi-Mg(14倍)、Gd(6.4~5.4倍)、Y-Mg(4.5倍)であり、いずれも従来の最高レベルの固体熱伝導率スイッチ材料と比肩するか凌駕する結果である。またMg系水素化物の本質的なフォノンの熱伝導率寄与を検討するために、MgH2の3つの相(α、β、γ)について第一原理計算によるフォノン分散および熱伝導スペクトルの導出を行った。この結果β層の熱伝導率が最も低く、γ、αの順に高い熱伝導率を有することが明らかとなった。今後これらの情報を活用しつつ、OFF時の低熱伝導率化の戦略を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定よりも広範な材料の検証が進み、新たに水素化物間のスイッチングの実証や水素化物の理論的な熱伝導率推定にまで研究が深まった。実用的にも優れた熱伝導率のスイッチング比率が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
スイッチング比率の向上のため、特にオフ時の熱伝導率の低減策を検討する。in-situ XAFSとin-situ XRDを軸に水素化物の構造および水素化挙動に関する研究を遂行する。水素化物間のスイッチングが有望であることが示されたため、GdHx系に加えてSmHx等の検証を行う。また水素化の活性化エネルギーと反応温度の評価を行いスイッチング動作の向上に向けた検討を行う。
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