研究課題/領域番号 |
23H01363
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝明 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (10378797)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / マイクロナノメカトロニクス / MEMS / メタマテリアル / 振動発電 |
研究実績の概要 |
ワイヤレス分散配置型の次世代IoTシステムにおいては、メンテナンスフリーとするためのセンサノード用の環境発電技術が必須となる。本研究では、独自の微細加工技術である3次元リソグラフィ技術により作製するメカニカルメタマテリアル構造を用いて、微小荷重で効率良く発電するフレキシブル摩擦帯電型発電デバイス(TENG, TriboElectric NanoGenerator)を開発している。自然界の材料では得ることが難しい特性を構造で得るメタマテリアル構造やその延長上に原理があるコンプライアントメカニズムの設計原理を用いて、その機械的特性を任意に設計可能なデバイスにより、環境や人の活動によるランダム性の高い微小振動エネルギーから高効率に発電する振動発電技術を目指している。当該研究期間中の研究項目として、メタマテリアル構造や3Dリソグラフィに関する研究(研究項目①)をベースとして、TENGについては、高発電量を求める発電デバイス(研究項目②)とフレキシブル性を生かした自己発電型接触センサ(研究項目③)の2項目に分け、広範囲の波及効果や効率的な研究成果の創出を目指している。 本年度は、研究項目①については、厚膜レジストおよび感光性ゴム材料(UV-PDMS)について、フォトパターニング特性とメタマテリアル挙動の評価を行った。その結果については、学会発表、論文発表を行い、学会での受賞に繋がった。また、研究項目②については、発電デバイスの評価装置を構築し、圧力、ストローク、発電波形を同時測定可能なタップ型評価装置を構築し、微細構造による発電評価を開始した。研究項目③については、接触センサの原理検証を行い、電子回路を組み合わせてシステム化が可能であることをしめした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究期間中の研究項目として、メタマテリアル構造や3Dリソグラフィに関する研究(研究項目①)をベースとして、TENGについては、高発電量を求める発電デバイス(研究項目②)とフレキシブル性を生かした自己発電型接触センサ(研究項目③)の2項目に分け、広範囲の波及効果や効率的な研究成果の創出を目指しており、本年度はおおむね計画通りに順調に進展している。 研究項目①「メカニカルメタマテリアル構造」については、本年度は、厚膜レジストや新規光感光性ゴム材料(UV-PDMS)を用いて3Dリソグラフィ法によりメタマテリアル構造を作製した。 研究項目②「摩擦帯電型発電デバイスとそのシステム化」については、本年度は、発電量増大を主目的とする最適な表面凹凸形状を検討し、構造表面積のさらなる増大を先行して進めながら、項目①で得られる設計原理を踏まえた構造の検討に着手した。とくに、デバイス評価においては、実際の利用を想定し、これまで構築してきた接触界面が面外方向に接触する(タップ型)をより精密化する評価装置を構築し、その基本性能を評価できた。 研究項目③「自己発電型摩擦帯電センサをトリガとしたイベントドリブンセンサ端末」については、本年度は、TENG全体をフィルム形状のポリマー材料を用いて構成することで、フレキシブルな自己発電型摩擦帯電センサ(フレキシブルTENG)を作製し、フレキシブルTENGをトリガとして駆動するイベントドリブンセンサ端末の設計を開始した。ポリイミドフィルムを構造体ベースとしたデバイスを試作し、デバイスが接触を感知した際の発生する信号波形が、ベース構造体を調節することで制御できることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目①「メカニカルメタマテリアル構造」については、厚膜レジストや光感光性ゴム材料のフォトパターニング特性がおおむねまとまったため、今後は3Dソグラフィ法により、様々なメタマテリアル構造を作製し、その機械構造としての特性評価を進めていく。摩擦帯電現象の増大に効果が期待できる、1)負のポアソン比、2)変形能増大(接触面積の変化連続性や最大値)、3)柔軟性(曲面追従性)、4)構造表面積増大などについて、有限要素法解析と実験による試作評価を比較し、接触界面で変形動作するメタマテリアル構造の設計原理を抽出する。 研究項目②「摩擦帯電型発電デバイスとそのシステム化」については、発電量増大を主目的とする最適な表面凹凸形状を検討し、発電デバイスの試作評価と整流・蓄電回路を含む発電デバイスのシステム化を進める。構造表面積のさらなる増大を先行して進めながら、項目①で得られる設計原理を踏まえた構造の検討に展開する。デバイス評価においては、実際の利用を想定し、これまで構築してきた接触界面が面外方向に接触する(タップ型)をより精密化するとともに、面内方向(スライド型)評価装置を構築する。 研究項目③「自己発電型摩擦帯電センサをトリガとしたイベントドリブンセンサ端末」については、フレキシブルTENGをトリガとして駆動するイベントドリブンセンサ端末の応用生について検討を進める。TENGをトリガにしたイベントドリブン回路を間欠動作してセンサ端末の消費電力を低く抑え、長期自立駆動するシステム構築を行う。 以上の3つの研究項目について検討を進め、最終的には、研究のコア技術の一つである3次元微細加工技術である3Dリソグラフィ法を独自性のベースとしながら、ポリマーMEMSの解析・加工・応用技術として、申請者が創成を目指している「有機MEMS設計工学」の基盤構築を進めていく。
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