研究課題/領域番号 |
23H01389
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 渉太 東北大学, 工学研究科, 助教 (90823526)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 活性種制御合成 / 五酸化二窒素 / 窒化水素 / コロナウイルス |
研究実績の概要 |
本研究では,これまで研究代表者が開発してきた,広範な水素・窒素・酸素から成る活性種(HxNyOz)合成制御域を有するプラズマ反応システムに,空気分子組成を変える空気分離前処理を導入して,放電後化学を理解し積極利用することで,高い応用性を有する新規HxNyOzをその場で精密制御合成できる技術を創生することを目的としており,当該年度は以下の研究成果を得た. ①ハイブリッドプラズマ反応システムの開発:超低露点に制御された乾燥流路と加湿流路をそれぞれ有し,空気,窒素,酸素,アルゴン等を8台の質量流量制御装置を用いて混合することで,ガス組成が厳密に制御可能なガス供給システムの構築を行った.また,組成制御されたガスが供給された複数のプラズマ反応炉を通して得たプラズマ活性ガスを混合する実験系を確立した. ②プラズマ合成HxNyOz組成の時間発展多点計測と反応モデルの構築:ハイブリッドプラズマ反応システムの流路内にて,上流と下流にフーリエ変換赤外線分光光度計(FT-IR)を設置することで,同時多点計測を可能にした. ③プラズマ合成HxNyOzによるアミノ酸修飾作用解析とヒトコロナウイルス不活化作用の計測:研究代表者が保有する,空気から五酸化二窒素(N2O5)を,選択的(10以上の選択比)かつ高濃度(300 ppm以上)に合成可能な技術を用いて,N2O5のアミノ酸化学修飾効果を高速液体クロマトグラフィ質量分析計(LC-MS)により調べた.その結果,N2O5が液中に溶解する際に一時生成する中間体の効果により,気液界面付近で特異な反応修飾を行うことが明らかとなった.また,N2O5のヒトコロナウイルス不活化効果を調べたところ,オゾン(O3)よりも高い不活化作用が検出され,ウイルス不活化に非常に有望なガス状化学種であることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画にあったハイブリッドプラズマ反応システムと活性種HxNyOzの多点同時計測システムの構築はどちらも完了した.それに加え,当初の計画には無かった,五酸化二窒素のアミノ酸化学修飾メカニズムと他の化学種よりも高いヒトコロナウイルス不活化効果を明らかにし,五酸化二窒素の新たな機能を見出すに至ったため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,FT-IRによる活性種HxNyOzの多点同時計測実験と化学反応モデルによる計算シミュレーションを併用し,特に脱酸素環境の化学種HxNy反応系の解明を試みる.また,それらの知見を活用して,生物作用の知見が全くない活性種の制御合成に挑戦し,その作用を明らかにしていくことで,有望な新規化学種HxNyOzのスクリーニングを行う.
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