10 kVA以上の中容量トランス・インダクタの巻線には平角線が多用されており、SiC-FET を用いた10 kHz以上の高周波駆動に伴って表皮・近接効果に起因する交流銅損が増している。 本研究では交流銅損の低減と軽量化のための磁性被覆平角アルミニウム線の交流銅損の磁性被膜(磁性コンポジット)材の比透磁率や寸法などのパラメータが交流銅損低減効果に与える影響を明らかすることを目的としている。また、磁性コンポジット材の磁性粉末の材質や形状が比透磁率や鉄損に与える影響を究明し、さらに、交流銅損の測定システムを構築して交流銅損の実測値と計算値とを比較することで妥当性を検証する。高周波トランス・インダクタに磁性被覆平角アルミニウム線を適用して、平角銅線を用いたトランス・インダクタよりも50%の軽量化と30%の銅損低減を実証こともも目的としている。 そこで、トランスの表皮効果と近接効果に起因する交流銅損を低減するために、センダスト扁平紛を用いた磁性テープを開発した。ドクターブレード塗工法によって製作し、目標の比透磁率40を達成した。添加剤の適切な配合比に加えて、ドクターブレードのスラリー出口形状を最適化することにより、扁平紛の配向を実現した。 また、交流銅損の測定システムを構築して、磁性テープを平角アルミニウム線に適用することで交流銅損の低減を検討し、交流銅損の30%低減を達成した。 さらに、容量15kVA,駆動周波数16kHzの高周波トランスに適用した。平角銅線を用いたトランスと磁性テープを巻いた平角アルミニウムを用いたトランスの質量は、それぞれ、10.1kgと7.8kgであり、35%軽量化した。また、定格電流駆動時におけるトランスの温度上昇は、9.2℃と9.0℃であり、同程度の発熱であった。
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