• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実績報告書

敵対的サンプルを用いた人が視認できないディスプレイーカメラ可視光通信

研究課題

研究課題/領域番号 23H01413
配分区分補助金
研究機関名古屋大学

研究代表者

岡田 啓  名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (50324463)

研究分担者 和田 忠浩  静岡大学, 工学部, 教授 (00303529)
小林 健太郎  名城大学, 理工学部, 准教授 (40583878)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワードディスプレイーカメラ可視光通信 / 敵対的サンプル / 機械学習
研究実績の概要

ディスプレイ-カメラ可視光通信では,視覚情報にデータ情報を重畳した画像を生成してこれをデジタルサイネージのディスプレイに表示し,それをスマートフォン等の携帯端末に搭載されているカメラで撮影して画像処理することでデータ情報を取り出す.
このディスプレイ-カメラ可視光通信において本研究では,機械学習モデルにおける敵対的サンプルを用いた人に視認されにくいディスプレイ-カメラ可視光通信の実現を目的とする.機械学習モデルとして,画像の特徴に基づいてそれがどの分類対象に属しているかを検出する画像分類器と,1枚の画像からそこにある物体の奥行きを推定する画像深度推定器を用いる.どちらの手法も算出される画像の特徴量に基づいて出力が得られる.本手法では,敵対的サンプルを利用して画像の特徴量を意図的に制御することで,視覚情報の画像にデータ情報を埋め込み伝送する.
2023年度は,画像分類器/画像深度推定器の選定と摂動画像生成について取り組んだ.画像分類器を用いた場合では,受信機で用いる分類器としてinception-v3を選定し,摂動を加えた画像の分類器出力と希望出力の差を評価する関数としてクロスエントロピーを用いて,最急降下法により摂動を生成した.そして,摂動を加えた画像をそのまま分類器に入力したとき,希望出力の特徴量の割合が99.9%となっており,画像分類器による情報伝送が可能であることを示した.また,画像深度推定器を用いた場合では,Gaoらが作成したモデルを選定し,摂動を加えた画像の深度推定結果とデータ画像の2乗平均誤差を深度損失と定め,最急降下法により摂動画像を生成した.そして,理想的な通信路でのシミュレーションを行い,適切にパラメータを調整することで,摂動を加えた画像のピーク信号対雑音比が32 dB以上とビット誤り率0.13以下を達成した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

申請書において,2023年度は画像分類器/画像深度推定器の選定と摂動画像生成について取り組むことを予定していた.
これに対し研究実績の概要で述べたように,画像分類器を用いた場合では,受信機で用いる分類器としてinception-v3を選定し,クロスエントロピーを評価関数として用いることで摂動画像を生成した.当初予定していなかったが,摂動を加えた画像をそのまま分類器に入力するという理想的な状況ではあるが性能を評価した.その結果,希望出力の特徴量の割合が99.9%となっており,画像分類器による情報伝送が可能であることを示した.また,画像深度推定器を用いた場合では,Gaoらが作成したモデルを選定し,損失関数として2乗平均誤差を用いて最急降下法により摂動画像を生成した.そして当初予定していなかったが,摂動を加えた画像をそのまま画像深度推定器に入力するという理想的な状況ではあるが,シミュレーションにより提案手法の性能を評価した.
上記のように,当初の目的に加え,理想的な状況ではあるが性能評価までも行うことができ,当初の計画以上に進展していると言える.

今後の研究の推進方策

本研究では,(i)画像分類器/画像深度推定器の選定とデータ情報を埋め込むための摂動画像生成,(ii)可視光通信路による撮影画像の劣化とその影響軽減策の検討,(iii)画像分類器/画像深度推定器の改良,に取り組む.2023年度はこのうち,(i)画像分類器/画像深度推定器の選定と摂動画像生成について取り組み,当初の計画以上に進展することができた.
2024年度から2026年度では,(ii)可視光通信路による撮影画像の劣化とその影響軽減策の検討,(iii)画像分類器/画像深度推定器の改良,について取り組む.送信機のディスプレイに表示された重畳画像を受信機のカメラで撮影するとき,可視光通信路の影響により撮影画像に劣化が生じる.この劣化により摂動画像で加えられた特徴量が意図した通りに得られず,画像分類器の出力が誤ってしまったり,画像深度推定器の出力深度マップが劣化してしまうことが予想される.そこでこの影響を評価するとともに,この劣化を防ぐ方策について検討する.画像分類器を用いた場合では,予想される画像の劣化に対して予め耐性のある敵対的サンプルを生成するEOT (Expectation Over Transformation) 処理を加えることが考えられる.また,画像深度推定器を用いた場合では,劣化した深度マップから機械学習を用いてデータ情報を推定する方策が考えられる.さらに,データ情報を伝送するのに適するように画像分類器/画像深度推定器を改良する.また,画像深度推定器を用いた場合では,データ画像の生成方法についても検討する.

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件)

  • [雑誌論文] Data Signal Detection and Demodulation Based on Object Detection DNN for Image Sensor-Based Visible Light Communication2023

    • 著者名/発表者名
      Miki Yuya、Kobayashi Kentaro、Chujo Wataru
    • 雑誌名

      IEICE Communications Express

      巻: 12 ページ: 628~632

    • DOI

      10.23919/comex.2023XBL0105

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 物体検出DNNを用いたイメージセンサ可視光通信方式の検出用マーカーに対する性能評価2024

    • 著者名/発表者名
      三木悠矢, 小林健太郎, 中條渉
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会, A-9-08
  • [学会発表] イメージセンサ可視光通信におけるCNN型復調方式の実画像パラメータを考慮した性能向上2024

    • 著者名/発表者名
      伊与田友貴, 小林健太郎, 岡田啓, ベンナイラシャドリア, 片山正昭
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会, A-9-07
  • [学会発表] デジタルサイネージ・イメージセンサ可視光通信における多段ウェーブレット変換を用いた色度変調の性能評価2024

    • 著者名/発表者名
      則武克昌, 小林健太郎, 中條渉
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部卒業研究発表会, P1-04
  • [学会発表] 単眼深度推定モデルの敵対的サンプルを用いたディスプレイーカメラ可視光通信の評価実験2024

    • 著者名/発表者名
      イチャンソク, 岡田啓, 和田忠浩, ベンナイラシャドリア, 片山正昭
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告, SeMI2023-75
  • [学会発表] 仮想画像に基づく画像分類器を用いる可視光通信システムの通信性能の評価2024

    • 著者名/発表者名
      内藤正崇,和田忠浩,椋本介士,岡田啓
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告, WBS2023-66
  • [学会発表] ディスプレイ-カメラ可視光通信における誤り訂正符号によるデータ損失の影響軽減2024

    • 著者名/発表者名
      大河知恵里, 岡田啓
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部卒業研究発表会, P3-03
  • [学会発表] Visible Light Communication Systems Using a High-speed Display and Rolling-shutter Camera2023

    • 著者名/発表者名
      H. Okada, T. Hayashi, K. Kobayashi, T. Wada, C. Ben Naila, M. Katayama
    • 学会等名
      Asia-Pacific Conference on Communications (APCC)
    • 国際学会
  • [学会発表] study on data signal detection and demodulation based on object detection DNN for image sensor-based visible light communication2023

    • 著者名/発表者名
      Y. Miki, K. Kobayashi, W. Chujo
    • 学会等名
      IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communications Symposium (APWCS)
    • 国際学会
  • [学会発表] A study on data signal superimposition using segmentation in digital signage and image sensor-based visible light communication2023

    • 著者名/発表者名
      N. Oyabu, K. Kobayashi, W. Chujo
    • 学会等名
      International Conference on Materials and Systems for Sustainability (ICMaSS)
    • 国際学会
  • [学会発表] Performance of signal detection and demodulation based on object detection DNN for image sensor-based visible light communication2023

    • 著者名/発表者名
      Y. Miki, K. Kobayashi, W. Chujo
    • 学会等名
      International Conference on Materials and Systems for Sustainability (ICMaSS)
    • 国際学会
  • [学会発表] study on robustness against symbol misalignment and inter-symbol interference on a CNN-based demodulation method for image sensor-based visible light communication2023

    • 著者名/発表者名
      Y. Iyoda, K. Kobayashi, H. Okada, C. Ben Naila, M. Katayama
    • 学会等名
      International Conference on Materials and Systems for Sustainability (ICMaSS)
    • 国際学会
  • [学会発表] Validation of Hidden Screen-Camera Communication Systems Using Adversarial Examples on CNN Depth Estimation Model through Simulation2023

    • 著者名/発表者名
      C.S. Lee, H. Okada, T. Wada, C. Ben Naila, M. Katayama
    • 学会等名
      International Conference on Materials and Systems for Sustainability (ICMaSS)
    • 国際学会
  • [学会発表] イメージセンサ可視光通信におけるCNNに基づく復調方式のシンボル間干渉に対するロバストネスに関する一検討2023

    • 著者名/発表者名
      伊与田友貴, 小林健太郎, 岡田啓, ベンナイラシャドリア, 片山正昭
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告, CS2023-47
  • [学会発表] イメージセンサ可視光通信におけるCNN型復調方式の単色背景画像に対する実験的性能評価2023

    • 著者名/発表者名
      伊与田友貴, 小林健太郎, 岡田啓, ベンナイラシャドリア, 片山正昭
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告, WBS2023-39
  • [学会発表] 物体検出DNNを用いたイメージセンサ可視光通信方式における受信画像の歪みに対する性能評価2023

    • 著者名/発表者名
      三木悠矢, 小林健太郎, 中條渉
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告, WBS2023-41
  • [学会発表] 高速表示ディスプレイとローリングシャッタカメラを用いた可視光通信システムにおけるデータレート向上の検討2023

    • 著者名/発表者名
      大河知恵里, 岡田啓, ベン ナイラ シャドリア, 片山正昭
    • 学会等名
      革新的無線通信技術に関する横断型研究会(MIKA)
  • [学会発表] 単眼深度推定モデルの敵対的サンプルを用いたスクリーンカメラ通信のシミュレーションによる検証2023

    • 著者名/発表者名
      イチャンソク, 岡田啓, 和田忠浩, ベンナイラシャドリア, 片山正昭
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告, WBS2023-6

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi